商船三井クルーズ、新船投入で客層拡大へ 働く世代に照準 向井社長「兆し感じる」

2024.12.16 00:00

12月7日、東京国際クルーズターミナルに三井オーシャンフジ(左)とにっぽん丸がそろい踏み

 商船三井クルーズは12月から新船「MITSUI OCEAN FUJI(三井オーシャンフジ)を投入し、2隻体制で運航を開始した。米シーボーンクルーズから購入した全室スイートの高級船を改装し、既存の「にっぽん丸」を上回る3万2477トンながら、乗客定員はほぼ同水準の458人。1隻で年間3万人弱が乗船していた従来の2倍の集客を目指す。

 日本船社が複数のクルーズ客船を運航するのは、同社(当時・商船三井客船)がふじ丸に加えて現にっぽん丸を就航させた1990年以来。にっぽん丸は日本各地に配船するの対し、三井オーシャンフジは外国籍船の特性も踏まえ、韓国や台湾など近隣の海外諸国に寄港するコースに投入してすみ分ける。

 挑むのは新たな客層の開拓だ。既存顧客は65歳以上のシニア層だが、働き盛りの40~50代をターゲットに据え、5泊や7~8泊など参加しやすい短めのコースをそろえた。12月7日に東京国際クルーズターミナルで開いた就航記念イベントで、向井恒道代表取締役社長は「日本人の有給休暇取得率は8年連続で上昇している。5日休めばクルーズに乗ることができ、幅広い人にアピールしたい」と意欲を示した。

 ワーケーションなども想定し、ラウンジにはパソコンの使用を想定したワークスペースを設けた。現時点ではまだ客層の変化は数字上に表れていないようだが、「問い合わせが増えており兆しを感じている」(向井社長)という。

 親会社の商船三井は成長領域のクルーズに注力する方針で、新たに2隻を建造する計画。現行の船を退役させずに並行して運航する可能性がある。向井社長は「何隻体制になるかは、どれだけ今回評価いただけるかがポイントになってくる」としている。

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