ナイトライフ復活なるか 東京の夜をもっと楽しく
2024.12.16 00:00
東京の夜は寂しい。訪日外国人旅行者はそんな感想を抱いていそうだ。コロナ禍を経て飲食店の営業時間は短縮傾向で、夜に楽しめる文化施設やアクティビティーも依然少ないといわれる。インバウンド消費拡大に欠かせないナイトタイムエコノミーの活性化を考える。
東京は街として大きな魅力を備えているのは間違いない。コンデナスト・トラベラーの「世界で最も魅力的な大都市」の1位を獲得し、ユーロモニターインターナショナルの「訪れたい観光都市100選」では4位、オックスフォード・エコノミクスの「世界の都市ランキング」でも4位となる東京はいまや、その魅力に関して世界上位の常連だ。
ところが東京には大きな弱点がある。東京を世界3位に位置付けた「世界の都市総合力ランキング」(森記念財団都市戦略研究所)は、総合1位ロンドンや2位ニューヨークと比べた大きな弱点の1つが「ナイトライフ充実度」だと指摘している。上位の2都市はこの指標に関しても上位なのに対し、東京は30位と大きく引き離されており、「ナイトライフ充実度とハイクラスホテル客室数が弱い点がロンドンやニューヨークに追い付けない要因」と結論付けている。
東京都の23年の調査によると訪都外国人旅行者に「東京の魅力」(複数回答)について尋ねた結果は、「人が親切」や「衛生的」「治安がよい」の上位3項目がいずれも50%台であるのに対し、「ナイトライフ観光が魅力的」との回答は2.8%に過ぎなかった。また実際に訪都中に行った活動を尋ねた結果(複数回答)は、トップの「日本食を楽しむ」が93.3%であるのに対し「ナイトライフを楽しむ」は25.3%にとどまっている。
東京に象徴されるナイトライフの貧弱さは日本中の各都市にも当てはまる課題だ。その問題意識が一段と高まったのは東京五輪の準備段階からだった。五輪開催はインバウンド誘致拡大と訪日外国人旅行消費額拡大を実現する絶好のチャンスだが、五輪前後の経済波及効果を最大限に取り込んだ成功モデルとなったのが12年ロンドン五輪。その経済的な成功要因を分析するなかで、ナイトタイムエコノミーの重要性に注目が集まり、国を挙げたナイトタイムエコノミー促進が動き始めた。
また、カジノ合法化の動きとも重なり、ナイトタイムエコノミーの強化は政府の政策課題としても取り上げられるようになった。16年には改正風営法が施行され、それまで禁じられていた夜0時過ぎに飲酒を伴うダンスやエンターテインメントを提供することができるようになった。
19年には東京観光財団によるナイトライフ観光振興のための助成金制度が設けられ、大手企業が参加するナイトタイムエコノミー推進協議会も発足。渋谷区がナイトアンバサダーにヒップホップの有名ミュージシャンを起用して渋谷の夜の魅力を発信したり、豊島区が演劇やコンサートを楽しんだ後も余韻を楽しめる場を確保する「アフター・ザ・シアター」に取り組み始めたのもこの頃だ。ところが20年にコロナ禍が日本を襲い、ナイトタイムエコノミーへの期待は一気にしぼんだ。
3年を経てようやく日本のナイトライフに活気が戻り始めたものの、ナイトタイムエコノミー活性化への道はコロナ禍前より険しいものになっている。コロナ禍で外出の機会が減り会食や飲酒から遠ざかっていた人々のライフスタイルは様変わりし、夜の街を楽しむ人の数は減少した。
何とか生き延びた飲食店も需要の減少と人手不足により営業時間を短縮。現在では東京でもラストオーダーが21時というレストランが珍しくなくなった。かつては夜0時まで営業していた飲食店が21~22時に閉店したり、深夜営業していた都心のファーストフード店が22時台に閉店するケースも多い。まさにナイトタイムエコノミーの活性化とは真逆の動きが起きている。
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