雇調金不正受給の公表、後絶たず 東京のみでも断続的 HIS連結子会社に新たな疑い

2024.12.09 00:00

 コロナ禍で助成率の引き上げなど特例措置が講じられた雇用調整助成金の支給は多くの企業の経営危機を支えたが、今も不正受給の摘発が相次いでいる。東京商工リサーチ(TSR)によると、全国の労働局が10月末までに公表した不正受給件数は、特例措置が始まった20年4月から累計で1446件。件数は直近2カ月で75件増えた。不正受給総額は463億7000万円に上る。旅行業を含む「生活関連サービス業、娯楽業」は7件増の84社と業種別4位で、新たな疑いも出てきた。

 エイチ・アイ・エス(HIS)は11月25日、連結子会社のナンバーワントラベル渋谷が20年4月から特例措置終了の23年3月までの3年間に雇調金を不正に受給していた疑いで、厚生労働省東京労働局から調査を受けていることを明らかにした。社内調査などからも不正受給があった可能性は極めて高いと判断した。受給総額は約1億円で、受給済みの雇調金の返納を含め、労働局から結果が出次第、速やかにその判断に従うとしている。

 事態を受けてHISは、グループ全体において雇調金の受給に関して問題がなかったかどうかの確認調査に乗り出した。このため、12月13日に予定していた24年10月期の連結決算の発表を延期するなど影響は広がっている。

 不正受給の件数が多く旅行業の分布率が高い東京都に限って見ると、東京労働局の公表で24年度は12月5日時点で全45社のうち、事業概要に旅行業と記載されている会社は1社のみ。しかし、ここに新たに加わる可能性がある。22年度は全49社中3社、23年度は全97社中3社が旅行業として名前が公表されていた。

 不正受給は全体的には減少傾向にあるが、今後も予断を許さない。

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