COP初、観光業の気候対策宣言で歴史的節目 課題は行動 日本の出遅れ感指摘する声も

2024.12.02 00:00

11月20日に初めて観光に関して議論する観光デーが設けられた(写真提供/COP29)

 アゼルバイジャンの首都バクーで開かれた第29回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP29)は、観光産業にとって大きな節目となった。行動計画に史上初めて観光産業の気候変動対策が盛り込まれた。世界の国内総生産(GDP)の3%を担う観光産業は温室効果ガス排出量の8.3%を占めるとされ、気候変動への責任と行動による貢献は大きい。「観光における気候変動対策強化に関するバクー宣言」には、52カ国が署名し、国連は大きな成果と評価した。

 宣言では、パリ協定で義務化された「国が決定する貢献」の次期策定に観光行政の貢献を組み込むことを検討し、観光政策へ気候変動対策の統合を強化することが盛り込まれた。国連世界観光機関(UN ツーリズム)のズラブ・ポロリカシュビリ事務局長は「ビジョンがコミットメントに変わる転換点」とした。

 観光産業の関与を促すため、22年のグラスゴー宣言を強化する。観光の温室効果ガス排出量を30年までに半減、50年に実質ゼロにする目標で、900の署名国の行動計画が前進しつつある。COP29では新たに58カ国が署名した。科学的なアプローチも議題に上り、国連の「観光の持続可能性を測定するための統計的枠組み(MST)」を世界、国、ビジネス、製品のレベルで活用する。

 重要なのは各国がどう戦略に反映するか。日本から参加したJARTA(責任ある旅行会社アライアンス)の高山傑代表理事は、日本を含むアジアから署名にかけ着けた大臣級出席者がほぼいなかったと残念がる。「世界で10人に1人が観光産業に従事しているとされるが、5人に1人が地球温暖化で職を失うだろうともいわれる。日本は戦略で出遅れており、行動に移す時期はとっくに来ている」と指摘した。

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