2024年11月25日 12:00 AM
「好きな音楽とかは、友達同士で分かってればいいです。本当に知りたいなら別ですけど、なんとなく聞いてくる人に答えても意味なくないですか」
スタッフ同士の雑談が苦手、という男子大学生バイトに理由を聞くとこの回答。そういえば学生には気軽に趣味について聞かない、と知人の教授も言ってたっけ。といっても彼らが心を閉ざしているわけでもなく、互いの趣味が同じと分かると爆速で仲良くなる。集団で話すと沈黙が続くのに、一対一で一緒に作業をすると意見も言うし、時には夢や相談事も語ってくる。仕事を褒めると疑わしそうな顔をするが、一対一の場だと照れながらもうれしそう。
人なつこくて素直だがコミュニケーション下手で自信がなく、成長には補助が必要。それが私の現代若者像だ。
……と漠然と思っていたら、そのまんま本書で言語化されていた。
目立ちたくない、浮きたくない、決めたくない、均等分配がいい、能力に自信はないが社会貢献はしたい。
昭和ならダメな奴で片付けられそうだが、著者が例に挙げる若者の言葉は、学生や20代のスタッフから私もよく聞くやつだ。「皆で決めました」「そんなことしたら浮いちゃう」。空気を乱さず競争より協調、会社選びで重視するのは研修制度。“いい子”を育んだ環境や社会情勢を著者は豊富なデータと実例を用いて分析を試みる。
「指示は具体的なほどいい」「若者は『現役選手』しか尊敬しない」など“処方箋”的なヒントも提示されるが、本書で得られるいちばんの収穫は、訳知り顔で語られるステロタイプの若者像を別の方向から見直せること。繊細で自信なさげな「いい子」たちの扱いに戸惑いがちな諸先輩方にこそ一読をおすすめしたい一冊だ。
山田静●女子旅を元気にしたいと1999年に結成した「ひとり旅活性化委員会」主宰。旅の編集者・ライターとして、『決定版女ひとり旅読本』『女子バンコク』(双葉社)など企画編集多数。最新刊に『旅の賢人たちがつくった 女子ひとり海外旅行最強ナビ』(辰巳出版)。京都の小さな旅館「京町家 楽遊 堀川五条」「京町家 楽遊 仏光寺東町」の運営も担当。
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