次はDMCの時代? 整備に向かう地域、その役割とは
2024.11.25 00:00
地域で高い旅行消費が見込める訪日外国人の誘致に向けて、観光地域づくり法人(DMO)がDMCの機能や体制を整える動きが高まっている。観光庁が地域側に求めていることが背景の1つ。DMCを標榜する旅行会社は以前からあるが、いま求められているDMCとは、どのような存在なのか。
DMC(デスティネーション・マネジメント・カンパニー)は、もともと日本には存在しない概念だった。基本的にデスティネーション、つまり着地側に拠点を置いて旅行ビジネスを展開する事業者を指すが、日本では発地側を拠点として旅行ビジネスを展開するのが一般的だったため、DMCの概念は育たなかった。地域の観光素材の発掘や商品企画・造成はもちろん、仕入れや手配までも発地側の事業者、いわゆる旅行会社が手掛けてきたわけだ。
DMCという存在がクローズアップされるようになった発端は、03年に国が観光立国を宣言したことにさかのぼる。宣言によって観光振興への期待が高まり、「住んでよし、訪れてよし」の理念を掲げる観光地域づくりが一気に動き出した。それによって必要になったのが、着地側の地域が主体的に観光素材や地域の魅力の発掘に携わることであり、その結果として着地型旅行という新たな旅の形が生まれた。
ただ着地型旅行は、発地型の旅行に専念してきた既存の旅行会社の手に余るもので、採算的にも割が合わないため、担い手の空白地帯となってしまった。その結果、着地型旅行の企画・開発・造成・販売を円滑に進める主体としてDMCの存在が次第に注目されるようになった経緯がある。
また、公的かつ非営利な組織として観光地経営に係るDMO(デスティネーション・マネジメント・オーガニゼーション)の存在も重視され、全国各地に多くのDMOが設立されるに至った。しかし、デスティネーション・マネジメントを完遂するには全体をコントロールして観光振興を導くDMOだけでなく、実際の商品化や商品販売を担い地域に収益をもたらす営利組織としてのDMCも欠かせない。DMOがDMC機能を併せ持つスタイルも含め、DMOとDMCが両輪となって地域の観光振興を推進することが重要されている。
DMCの概念は日本では比較的新しいものだが、欧米では長い歴史がある。ヨーロッパの老舗DMCとされるクオニイの創業は1906年。2017年にクオニイを買収したJTBより12年早い創業で、DMCとして100年以上の歴史を持つ。ただし、実態としてはインカミング・ツアーオペレーター、ランドオペレーターとしての事業展開が主体の歴史だったともいえる。
現在のDMCのスタイルは1970年代以降に定着したとされ、MICEやSITなど専門性の高い旅行を手掛けるプランナーやインセンティブハウスの、受け入れ地側のパートナーとしてその存在感を発揮するところから始まっている。DMCには、地域に関する詳細かつ豊富な情報の集積や収集力、地域に密着した専門性、ツアーを実現する企画提案力が求められた。
また基本的にB2Bが主体のDMCは、消費者への直接販売主体のインカミング・ツアーオペレーターとは異なる。同じB2B主体でも、デスティネーション・マネジメントを目的に着地側の目線で事業展開するDMCは、基本的に受託型のビジネスを展開するランドオペレーターとも異なる存在だ。
そうしたなか、日本で早くにDMCに目を付け機能強化に取り組んできたのがJTBだ。2006年に地域密着と交流文化事業の推進を掲げ分社化を実施。47都道府県の支店がそれぞれの地域の自治体や地域の人々と共に地域の魅力を掘り起こし、観光資源として磨き上げ、日本全国や世界各国から人を呼び込む「47DMC」戦略に取り組んできた。18年には分社化したグループ会社を再統合したが、47DMC戦略は維持している。DMC機能強化のため、22年には国内の宿泊仕入れと着地コンテンツ開発の機能を本社から支店に移管し、商品の造成と流通の迅速化を図る構造改革も実施した。
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