観光レジリエンスサミットを機に危機管理を強化 仙台市、初のマニュアル策定

2024.11.18 00:00

シンポジウムの様子

 観光庁は11月9~11日、国連世界観光機関(UNツーリズム)と連携し、観光レジリエンスサミットを仙台市で開催した。自然災害や感染症など、危機に対するレジリエンス(回復力)の強化が世界共通の課題となるなかで企画・実現した閣僚級会合。

 アセアンや太平洋の国等が参加し、各地域の観光産業の特徴を踏まえてリスクを把握・評価し、観光分野に活用することなどを盛り込んだ共同声明をまとめた。開催地の仙台市はサミットを機に観光危機管理マニュアルを作成。シンポジウムではその取り組みに注目が集まった。

 仙台市は地域DMOの仙台観光国際協会の理事長に4月、危機管理のプロ、前仙台市消防局長の結城由夫氏が就いた。市は災害に見舞われるたびに地域防災計画を見直してきたが、観光に特化したマニュアルの策定は初めて。策定に当たっては観光庁の手引きを参考にし、平常時の減災、備え、発生時、復興の4つのフェーズで方針を定めた。

 結城理事長によると、策定に向けて特に外国人観光客に焦点を当てた。帰宅困難者対応訓練では、緊急避難場所で歩いて帰れる人とそうでない人を振り分け、外国人客など帰れない人を一時滞在場所で受け入れるシステムを構築。案内に他言語シートを活用した。

 モデレーターを務めた観光レジリエンス研究所の高松正人代表は「最も良く出来ているマニュアルの1つ」と評価し、民間事業者や交通機関、空港などと緊密に連携して取りまとめたことを理由に挙げた。結城理事長は「今後いかにマニュアルを浸透させ、実効性を高めていけるかが大事」と語る。

 自治体の観光危機管理計画の策定はそれほど進んでいない。シンポジウムでは事前の備えと訓練の重要性が繰り返し発信された。

【あわせて読みたい】観光危機管理計画、まだ15都道府県 手引き作成も進まず 部署間連携に難しさ