日本版ESTA 電子渡航認証制度導入へ

2024.11.18 00:00

(C)iStock.com/TonyStudio

電子渡航認証制度の導入に向けた検討が進んでいる。実現すれば入国管理の厳格化と円滑化の両立が期待され、世界的にも同様の制度を導入する国や地域が増える傾向にある。政府は30年の導入を目指すが、新たな制度はこれからのツーリズムにどのような影響をもたらすのか。

 電子渡航認証の認知度を上げたのは世界最大の旅行目的地である米国だった。08年に導入を発表し周知のための任意による申請期間を設けた上で09年1月から義務化。ペナルティーを伴う本格運用は導入発表から1年7カ月後の10年3月から開始した。すでに15年以上の実績がありElectronic System for Travel Authorizationの略称であるESTA(エスタ)として世界的に認知されており、日本で検討中の電子渡航認証制度は日本版ESTA、あるいはJESTAと呼ばれることも多い。

 電子渡航認証制度は短期滞在のビザ免除対象国からの渡航者に対して電子的な渡航認証を行う制度で、渡航者の情報はシステムに保管し必要に応じて活用する。これとは別に航空会社が搭乗客のチェックイン時に取得したパスポート情報を、到着国の入国管理システムに送信し対象者の渡航の可否を照会した結果が航空会社に返される事前旅客情報システム(IAPI=Interactive Advance Passenger Information)があり、ESTAと連携して機能させているケースもある。記事ではこれらを総称して電子渡航認証制度と呼ぶことにする。

 電子渡航認証制度が注目されるのは、入国管理の厳格化と円滑化を両立できるからだ。パスポート情報だけでなく、滞在先・滞在期間、滞在中の連絡先、メールアドレス、逮捕歴・犯罪歴や病歴、ビジネス渡航の場合は商談相手などの情報を求めることも可能で、多くの情報を基に入国の可否を判定できる。それによってテロや犯罪につながる恐れがある危険人物や不法滞在につながる可能性がある人物を事前にスクリーニングして入国を許さない。水際対策の強化が図られるわけだ。

 一方で事前に電子渡航認証制度に基づき入国を申請してあれば、渡航者にとっては入国時の審査手続きを簡素化でき円滑な入国が可能になる。通常の観光客や商用客には入国時の時間短縮と煩わしさの削減というメリットを提供でき、インバウンド促進にもつながる。

 こうしたメリットがあるため電子渡航認証制度を導入する国は米国以外にも複数ある。豪州は米国より早く1996年からETA(Electronic Travel Authority)の運用を開始している。カナダは16年からeTA(Electronic Travel Authorizations)を義務化し、ニュージーランドも19年からNz eTA(New Zealand Electronic Travel Authority)を義務化している。韓国も21年9月からK-ETA(Korea-Electronic Travel Authorization)を導入している。

 今年に入って制度を導入した国もある。ケニアは1月から電子渡航認証のeTAを導入した。イスラエルは7月から電子渡航認証制度(ETA-IL)の任意申請の受け付けを開始し、パイロット期間を経て25年1月からはETA-IL取得を義務化する。このほか、モルディブはすべての旅行者に対してフライト時刻の96時間以内にオンラインサイト「IMUGA」から旅行者申告書(Traveller Declaration)を登録することを求めている。

 また、今後は導入国・地域のさらなる拡大が見込まれている。欧州のシェンゲン協定加盟国が導入を予定しているのがETIAS(European Travel Information and Authorization System)だ。主としてテロ対策、非正規移民対策、人身売買犯罪への対策など欧州地域の安全対策強化を目指し欧州連合(EU)がシステムを開発した。シェンゲン協定加盟国と加盟申請中のキプロス、ブルガリア、ルーマニアが対象で、同協定に加盟していない英国、アイルランド、その他の非EU諸国が対象外とされている。運用開始は25年とされるが、正確な開始日時はまだ発表されていない。

【続きは週刊トラベルジャーナル24年11月18日号で】

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