『パーティーが終わって、中年が始まる』 氷河期世代の疲れた今に

2024.11.11 00:00

pha著/幻冬舎刊/1540円

 氷河期世代が中年になり、日本経済はさらなるピンチを迎えるかも、なんていわれている。非正規雇用労働者が多く未婚率も高く、マンパワーとして十二分に活用されてこなかったツケがこれから回ってくるぞ、という話だ。

 シェアハウス、外こもり、モノを持たないミニマルライフ、断捨離。長く続いたデフレ時代を彩ったワードの数々は、特に若き日の氷河期世代が担ってきたようにも思う。そんな世代を象徴した書き手の1人が、「日本一有名な京大卒のニート」といわれた本書の著者・pha(ファ)さんだ。

 1978年生まれの氷河期世代。自らもシェアハウスを運営しつつ、『持たない幸福論』『しないことリスト』『がんばらない練習』などの著作で同世代を力付けてきた著者が本書で語るのは、まさかの“中年クライシス”。

 「何もかもが値上がりしていく今の時代では、そんな(お金がなくても楽しく生きていける)意識は時代遅れなものになりつつあるのかもしれない」「今のネットはいつも争いや炎上があふれていて、とても疲れるものになってしまった」「歩いていてもあまり何も思いつかない。そもそも散歩自体がそれほど楽しくない」

 ええー……。あんなに散歩の楽しさを語っていたのに。これはファンに失望されちゃうんでは、と余計な心配をしてレビューを見ると、「凄いヒーリング作用」「私も同じ!」「しっくりくる」と共感の言葉が並ぶ。なるほど、こういうしょんぼりした感じも現代、特に氷河期世代のリアルなんだろう。

 考えてみればここで語られる喪失感や虚無感は、普遍的な中年の危機。氷河期世代の今をのぞき見したい、あるいは自分が歳を取って人生に疲れちゃったな、なんて時に一読をおすすめ。

山田静●女子旅を元気にしたいと1999年に結成した「ひとり旅活性化委員会」主宰。旅の編集者・ライターとして、『決定版女ひとり旅読本』『女子バンコク』(双葉社)など企画編集多数。最新刊に『旅の賢人たちがつくった 女子ひとり海外旅行最強ナビ』(辰巳出版)。京都の小さな旅館「京町家 楽遊 堀川五条」「京町家 楽遊 仏光寺東町」の運営も担当。

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