先住民族観光、経済効果670億ドル 背景に本物志向 伝統文化・言語の保全に貢献

2024.11.04 00:00

フィンランドはサーミ観光の推進とともに倫理ガイドラインで文化の搾取防止などに努めている

 世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)は10月に豪パースで開催されたグローバルサミットで、世界の先住民族観光市場は今後10年間で年平均4.1%の成長を続け、34年には世界経済に670億ドルの効果をもたらすとの調査レポートを公表した。報告書では、先住民族観光が特に都市部から遠く離れた地域の経済成長を牽引する役割を担っていると指摘。さらに、伝統文化の保護や地域社会に活力を与える点で重要かつ不可欠な存在だとしている。

 背景には、本物の文化体験に対する世界的な需要の高まりがある。重要な経済の牽引役として、先住民族観光は急速に台頭してきているという。地域には雇用や経済的価値を生み出し、観光客には、先住民族の歴史や伝統を体験し、学べる機会を提供する。先住民コミュニティーにとっては、観光を通じてかけがえのない文化や伝統的風習、言語の保存に重要な役割を果たす。

 西オーストラリア州では、23~24年に州を訪れた旅行者の87%がアボリジニ観光体験に興味を持ち、36%が実際に参加したという。21~22年は州の総生産を6380万ドル押し上げた。カナダでも、先住民族観光分野は約2000の事業と3万9000以上の雇用を支えており、17年には17億カナダドルの経済貢献を果たした。

 観光を通じた文化・言語保存の例では、北欧のサーミ人が製品に導入している認証マーク「サーミ・ドゥオジ」、ペルーでロボットを使ったクカマ族の言語保存などがある。

 これらの意義を踏まえ、WTTCのジュリア・シンプソン会長兼CEOは「観光産業は先住民族ビジネスを支援し、彼らが繁栄するために必要な資源や資金を利用できるようにすることが極めて重要」とコメントした。