「観光が怪物にならないために」 JARTAが警鐘 産業に自覚と責任促す

2024.10.14 00:00

フォーラムでは、高山代表理事(右端)をはじめ加盟旅行会社らが考えを共有

 「観光が怪物となり本末転倒の結果を生むことは悲しいこと」。持続可能な観光を実践する旅行会社が集うJARTA(責任ある旅行会社アライアンス)が9月27日の世界観光デーに開催したフォーラムで、現状を憂う言葉が関係者から飛び出した。世界から観光客が押し寄せ、混雑や住環境を脅かすさまざまな問題が起きている。この状況を観光危機と捉え、抑止や回避に向けて「サステナブルツーリズム東京宣言2030ビジョン」を宣言した。

 宣言は、観光産業の従事者に自覚と責任ある行動を促す目的。旅行者、地域、地球、従事者に四方よしの社会の実現を目指す。持続可能な経営組織づくりに取り組むこと、文化遺産の悪影響や環境負荷の最小化に寄与することなど、6カ条を掲げた。

 国際基準に基づく認証制度を有効な手段として普及し、運用することも盛り込んだ。JARTAは現在、トラベライフ、グリーンキー、ブルーフラッグといった3つの国際認証を日本の事務局として運営する。

 高山傑代表理事は「どの地域も事業者の巻き込みがうまくできていない」と指摘する。集客などメリットがなければ事業者に響かないのが現実で、環境教育が必要だとする。「認証は取ることがゴールではなく、目指すことでやるべきことが見えてくる」(同)

 一方、企業が環境に配慮したように見せかけてアピールする「グリーンウオッシュ」も問題になっている。欧州連合(EU)理事会はこれを規制する指令を採択した。高山代表は「この流れが日本にも必ず来る」と指摘。「裏付けがないものは認められなくなり、厳格化される。あり方がさらに問われる時代になる」と見通した。