森トラスト、独自色でホテル事業拡大 歴史的建造物を再生 国立公園には慎重姿勢

2024.09.30 00:00

万平ホテルの改修後ロビー。老舗ホテルの象徴を踏襲しつつ昇華させ、30~50代の新規客を獲得

 全国でホテル開業ラッシュが続くなか、森トラストは歴史的建造物の再生で競合との差別化を図る。京都の旧延命閣、奈良の旧知事公舎に続き、長崎で旧修道院の保存・改修を進め、今冬に「ホテルインディゴ長崎グラバーストリート」として開業を予定する。軽井沢では老舗の万平ホテルで大規模改修を行い、伝統を残しつつ耐震やバリアフリー対応を強化し、国際水準のホテルに進化させた。リスクを取る運営形態にも優位性を見いだしている。

 30年度までにホテル事業の売上高を23年度比1.5倍の1000億円に拡大し、2000室増やす。現在33軒を展開するが、21軒の新規プロジェクトが進行中だ。ラグジュアリー・デスティネーション・ネットワーク構想と銘打ち、ゴールデンルートに加え、箱根や北陸など各地に国際ホテルを誘致する。開発の判断軸は、世界の旅行者に選ばれるための娯楽性、教育的要素、美的要素、非日常、感動体験の5つ。歴史的建造物はこれらを多く含み展開の要となる。

 ホテルの開発を巡っては、積水ハウスや大和リゾートなどハウスメーカー系も外資系ブランドとタッグを組んで参入し、競争が過熱している。だが、「単に運営を(外資系に)委託するのではなく、フランチャイズ形式で自らリスクを取り長年運営してきた強みがある」(森トラスト・増永義彦常務取締役)。

 折しも政府は全国の国立公園でのホテル整備計画を描く。国立公園は森トラストが重視する開発要素を多く満たしポテンシャルは高い。ただ、「電気や交通などインフラが整っていない所にまずホテルを造るといったやり方では課題がある」(増永常務)と指摘。「地域と一緒に考え弊害が起きないことを前提に計画を進める必要があるのでは」(同)と助言した。

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