葛飾区無償化で修学旅行に追い風 旅費高騰の中 来年度から実施へ

2024.09.16 00:00

 東京・葛飾区は区立中学校の修学旅行費用を区が負担することで来年度から無償化する方針を決めた。中学3年生を対象とした2泊3日の国内旅行にかかる保護者負担額を約8万円と想定し、対象となる約2900人分として概算で2億3200万円を予算案に盛り込む。子育て世帯への支援策の一環で、保護者の経済的負担軽減を図る狙い。

 区独自の取り組みで23区内で初という。全国でもこのレベルの人数・規模での前例はなさそうだ。修学旅行は、物価高や国内では訪日需要との宿確保の競合などもあり、旅行費用が上昇している。旅費の上限規定と実勢価格の乖離が大きく、規定内に収まらないケースが生じている。保護者にとっては費用負担が重く、参加を辞退せざるを得ない事態を回避するためにも、また旅行業界にとっても、歓迎の施策といえそうだ。

 日本修学旅行協会がまとめた修学旅行の費用規定等に関するレポートによると、東京都は23年度において、旅行期間や旅費について中学校は区市町村の基準によるとし、高校は国内が3泊4日以内で費用は8万6000円以内(税抜き)とされている。これが24年度では、中学校は引き続き区市町村の基準によるとの定めのままだが、高校は一挙に9万6000円以内に引き上げた。行政当局でも、コストアップが進むなか、以前のままの費用規定では修学旅行の実施は難しいと見ている証左の一例といえるだろう。

 東京・港区は、区立中学校の修学旅行を全員参加でシンガポールで行うことを決定している。全公立中学校の海外修学旅行は異例で注目を集めているが、保護者の費用負担は一律5万円に加え、パスポート代や現地活動費など以外は区が負担するのが特徴だ。

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