着地型で攻めの値付けも集客好調 下諏訪町、成長と雇用確保へ「正当な対価」

2024.09.16 00:00

諏訪湖と富士山を望む下諏訪町。日本列島を東北と西南に分ける断層「糸魚川静岡構造線」が通る

 大手旅行会社のパッケージツアーが並ぶ全国紙の新聞広告の中で、異色の存在が目を引く。下諏訪町地域開発公社が企画・実施する現地集合・解散の着地型商品だ。8月25日に掲載した商品の1つが「4つのテーマで紡ぐ信州下諏訪長期滞在の旅5日間」(1人14万円)。着地型では高額の部類だが、集客は好調で催行が決定している。

 町が滞在化促進と単価向上を掲げるなか、19年に旅行業登録を取得。21年から着地型商品を本格化した。高付加価値の旅で全国に市場を広げようと、顧客対象と読者層が一致する新聞に出稿し、現在は年6~8回掲載する。

 町は諏訪大社下社や縄文遺跡などを有し、中山道と甲州街道が交わる宿場町として栄えた歴史と文化がある。自己手配で訪れる人が多いが、知的好奇心が高く出費をいとわない層がいると見ており、長期滞在の旅は日ごとに4つのテーマで町の魅力を掘り下げた。遺跡発掘者や宿の当主が現地ガイドを務める。

 ただ、こうした旅行は、ガイドをはじめ地域にお金が落ちないと続かない。「地域と一緒に稼ぐことは、大手旅行会社には難しく、一時的なものになりがち。地域に対価を与え、旅行者に安心を届けるのが、われわれの役割」。それゆえの正当な対価だと、観光振興局の清水活則局長は説明する。

 職員はすべての客と対面し、案内を行う。顧客の声から新企画も生まれた。「中央構造線露頭見学と信州地質紀行2日間」は2つの構造線が交わう特異な町の地質を学ぶ。定員15人の枠が早々に埋まり、50人がキャンセル待ち。「来年以降拡大できる手応えがある」(観光振興部・井上健太部長)

 旅行業の売上高は1.7~2倍ペースで推移。24年度は目標2000万円で、すでにほぼ達成している。