海の日の意味
2024.08.19 00:00
今年7月15日は「海の日」。全国で記念行事が開催され多くの人で賑わった。私も東京国際クルーズターミナルで開催された記念行事のオープニングセレモニーに参列した。
海に四方を囲まれた日本。管轄海域が国土の約12倍で世界でも6位の面積を誇る有数の海洋国家である。海から多大の恩恵を受け、海運や造船といった海事産業、水産業、海上風力発電、近年ではレアアースなどの資源開発、新技術活用の分野でも注目を集めている。今年4月には政府が「海洋開発等重点戦略」を決定し、府省横断的に取り組むべき重要戦略を示している。
その中で海事産業の持続可能な発展のためには人材の育成や海洋教育の推進が極めて重要としている。特に近年、海事関係者からは共通の危機感として、子供や若者を中心に海への関心が薄れているとの声が上がる。今回の海の日のイベントでも、国土交通省が海事振興を目的に「海に行く」「船に乗る」「海を知る」につながり、子供や若者をはじめ多くの人に海や船がさらに楽しく身近な存在になるような世の中を目指した官民一体の事業「CtoSeaプロジェクト」を訴求。趣向を凝らした企業・団体の展示ブースや自動車船、海上保安庁の測量船の見学などで海の魅力やその恩恵、重要性を実感してほしいと期待する内容が目立った。
海の日は、1876年に明治天皇が東北巡幸の帰り道、青森から灯台視察船明治丸に乗船し、函館を経て7月20日に横浜に安着されたという史実に由来した「海の記念日」を休日とするために長年、海事関係者などが署名活動や国民運動に発展させるため地道な努力を重ねて国民の休日としたものである。
それを観光関係団体が中心となって観光需要創出と地域経済活性化のために、成人の日、敬老の日、スポーツの日とともに特定週の月曜日に移動させてハッピーマンデー制度の制定を要望し、三連休とした。私も当時、県議会や市町議会を回り、祝日三連休化法案の成立に意見書採択を働きかけたこと、特にハッピーマンデー最初の年の各三連休では予想以上の旅行者でツアーの予約が進み、駅構内、各方面に向かう新幹線や特急列車が混雑したことを覚えている。
ハッピーマンデー制度はすでに国民に定着しており、観光を生業とするわれわれにとっても地域にとってもなくてはならないものだろう。1泊ではなかなか行けない遠隔地にも足を運ぶことができ、地域の隅々まで観光による経済波及効果をもたらしている。
ただ、海の日を国民の休日にするために尽力した海事関係者からは海の日の趣旨が正しく国民に伝わっておらず、ただのイベント、お祭りとなっているだけではないかという疑念の声が少なからず出ているのも確かだ。私も複数の海事関係者から、海の日を元の7月20日に固定すべきではないかといった意見を聞いている。海の日だけではなく、ハッピーマンデーとして月曜日に移動した他の3つの祝日でも同様の考えを持つ人はいるだろう。
海の日について、観光産業はクルーズ、遊覧船、プレジャーボートといった旅客船、海水浴、マリンスポーツといった分野で旅行商品の販売促進活動を行う際や各社の広報誌等でその趣旨を積極的に周知していく努力を目に見える形で残していくべきだ。また、ハッピーマンデー制度の経済波及効果について継続して明らかにしていくことも必要だろう。
観光が地域経済の柱として貢献している姿を産業界が一枚岩となって示していけるよう、すべての観光関係者とともに努力を重ねていきたい。
最明仁●日本観光振興協会理事長。JR東日本で主に鉄道営業、旅行業、観光事業に従事。JNTOシドニー事務所、JR東日本訪日旅行手配センター所長。新潟支社営業部長、本社観光戦略室長、ニューヨーク事務所長、国際事業本部長等を経て23年6月より現職。
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