ユニークエクスペリエンス 特別な体験創出のヒント

2024.08.12 00:00

(C)iStock.com/Anastasiia Boriagina

訪日市場に向けてユニークエクスペリエンスを訴求する、観光庁・特別体験事業の採択企画357件が出揃った。インバウンド需要の地方への拡大や客単価向上といった課題解決を託された事業のスキームと、採択企画の内容を概観する。

 特別な体験の提供等によるインバウンド消費の拡大・質向上推進事業(特別体験事業)は23年度補正予算で事業化され100億円の予算が割かれている。この予算内で事業者に対して支援や補助が提供されるが、その金額は国・地方公共団体所管事業の場合は支援額の上限が8000万円、民間企業等支援事業では補助上限額が3750万円。

 特別体験のコンテンツ企画は1月と3月に公募され、有識者による審査を経て1次公募は113件、2次公募は244件が採択された。合計357件の特別体験コンテンツが日本ならではのユニークエクスペリエンスとして商品化され、販売される。事業の対象期間は来年2月末までとなっている。

 特別体験事業の目的は、日本が誇る魅力的な観光資源(自然、文化、食、スポーツ等)を活用し、特別な体験として訪日市場に提供。これまでにないインバウンド需要を創出することで、訪日外国人旅行者の消費拡大を促すこととなっている。また、インバウンド消費のコロナ禍からの回復は地方ごとに大きな差が生じていることから、地方の魅力を世界中に発信しインバウンド需要の恩恵を地方へ波及させることも大きな目的となっている。

 求められたのはこれまでにないインバウンド需要を創出できること。加えてインバウンド規模3000人以上の体験コンテンツもしくはイベントであるか、一般的なものと比較して単価が3倍以上になる高付加価値型の取り組みであることだ。

 これまでにない特別な体験とは、早朝や夜間といったコンテンツ化されづらかった時間帯を活用したり、未公開エリアの開放や非公開だった文化財・ユニークベニュー等の観光活用を実現したりする企画。あるいは有名シェフやスポーツ界のスター、芸術家、人間国宝など特別な人物と一緒に体験できる企画。さらに日本で初開催される世界的イベントや、大型インフラ設備をこれまでにない形で体験化できるもの、条例・規制等の改正等を伴う先進事例として他地域が参考にできるものなどが具体的なイメージとして挙げられた。

 もう一方の条件として挙げられた「単価が3倍以上」については、造成するコンテンツやイベントに係る訪日外国人旅行者の消費が、一般的な参加費や消費額と比較して単価が3倍以上になる高付加価値化を実現することが求められた。

 なお特別体験事業の申請のうち、地方(東京都、京都府、大阪府を除く各道県)で実施されるコンテンツについては、「地方プレミアム体験コンテンツ」の認定審査を希望することが可能とされた。地方の自然や伝統文化を活用し、食の地産地消や地域人材の活用と所得向上を促せる高付加価値型のコンテンツとして、特に優れた企画だけが認定される地方プレミアム体験コンテンツには優遇策も用意。採択後には早期事業着手に向け事務局による優先サポートが提供され、観光庁で実施するプロモーション等での優先的紹介も約束された。

 今回の特別体験事業の申請総数は公表されていないが「ほぼ想定どおりの応募が集まった」(観光庁国際観光課)としており、全国から集まった申請の中から357件が採択された。このうち地方プレミアム体験コンテンツに認定されたのは、「プレミアムの名にふさわしいコンテンツを厳選して絞り込んだ結果、『10件程度』という当初想定範囲内の9件となった」(同)。

 具体的には「インバウンド向け新潟SAKEフェア2024」や、地方の日本酒ツーリズムの高付加価値化をうたった「日本酒テイスティング体験『Ueda sake ceremony』と『Tanada Breakfast』」、海外富裕層をターゲットとした「アート(クラシック音楽)ツーリズム」「『みちのく潮風トレイル』を活用した高付加価値トレッキング事業」など。

【続きは週刊トラベルジャーナル24年8月12日号で】

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