不満の発端は日常生活の低下 オーバーツーリズムの影響 EYストラテジーが住民調査

2024.08.05 00:00

 EYストラテジー・アンド・コンサルティング(EYSC)はツーリズム産業の成長に向けて、オーバーツーリズムに関する住民調査を行った。19年と比べて宿泊者数の増加率が高い地域を10都市選び、それぞれ約200人にアンケートを行った。それによると全体の72%は観光客が多いことを肯定的に捉えている。一方で51%がオーバーツーリズムと感じ、悪影響として「公共交通や道路が混雑して使いづらくなった」ことが1位に挙がった。

 オーバーツーリズムと感じているのは調査した地域の中でも京都、浅草のある台東区、奈良、宮島のある廿日市市で特に多い。そう感じる理由は外国人客の増加が最も多く59%を占め、日本人・外国人双方の増加は24%だった。

 ただ、オーバーツーリズムと感じている人でも、観光客の増加が住民にもたらす良い影響を受け、「地域全体の景気が良くなった」ことや「新しい店が増えて選択肢が広がった」ことなどを挙げる。一方で、交通や公共サービスなど日常生活へのサービス低下が、観光客増加を否定的に捉えるきっかけになっている。悪影響には、混雑に続いて、「観光客のマナー違反」が2位、「公共サービスが劣化した」が3位となった。

 不満・課題解消に向けた方策は、観光客のマナー改善(61.6%)、交通インフラの改善(31.3%)、観光税等の徴収(24.4%)が上位。世界各地では主な対策として、上乗せ料金の設定、宿泊施設数等の上限設定、事前予約制の大きく3つが試行されている。

 しかしEYSCは「世界でもこれが正解という方策はない」とする。地域ごとにDMOが中心となり、各ステークホルダーが自分ごととして課題を捉えて取り組む観光マネジメントが、今後さらに重要になると指摘している。

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