旅のキャンセル料 時代に則したルールづくりに向けて

2024.07.29 00:00

(C)iStock.com/DragosCondrea

消費者庁がキャンセル料について実態把握と新たなルールづくりに動いている。昨年12月には解約料の実態に関する研究会を設置し、航空やホテルなどの事業者や業界団体からもヒアリングを重ねている。観光・旅行サービスのキャンセル料のあり方にも影響がありそうだ。

 商品やサービスなどを提供する事業者と消費者との間で交わされた契約を、消費者が解除する際に発生するのが解約料、いわゆるキャンセル料だ。このキャンセル料に関するトラブルは高止まりしている。消費者庁によれば、全国の消費生活センターに寄せられるキャンセル料に関する相談件数は22年度に約3万1500件だった。相談件数を商品・サービス別に見ると、上位1~3位は光通信回線、賃貸アパート、中古車販売・買い取りの各分野。観光・旅行関連では、予約サイトを利用したホテル・旅館等の予約が14位で、相談件数は比較的少ない方だった。

 キャンセル料に関する相談件数は15年度には4万件を超えていたし、コロナ禍前の19年度も3万9000件余りだったから、相談件数が増加傾向にあるわけではないものの、直近10年間を見ても3万件を下回ったことはなく、減少傾向にあるわけでもない。

 相談の内容は、予約サイトを利用したホテル・旅館等の予約に関しては、例えば「旅行サイトを見ている間に誤操作で予約をしてしまい、解約したところ宿泊料の100%のキャンセル料を請求された」といった内容の相談等が寄せられているという。とはいえ、全体を見渡せばその内容は必ずしも一様ではなく、高額なキャンセル料を請求されたとの訴えや、自己都合での解約に関するもの、自然災害等のやむを得ない事情による解約に関するものなど、トラブルの要因も問題の所在もさまざまだ。

平均的な損害の解釈に課題

 キャンセル料は事業者が設定するものだが、自由に設定できるわけではなく、消費者契約法が定める基本ルールから逸脱しないことが求められる。消費者を保護する目的で作られた消費者契約法の第9条1号は、契約の解除に伴う違約金(キャンセル料)を定める条項(解約料条項)について、契約の解除に伴い事業者に生じる平均的な損害の額を超える部分を無効としている。

 事業者がキャンセル料を定めていても平均的な損害の超過分は無効になるわけだ。つまりキャンセル料は平均的な損害の範囲内で設定しなければならないということになる。これは契約の解除に伴って消費者が高額なキャンセル料等を請求され不当な出損を強いられないようにするための配慮だ。

 ところが、どのような場合に平均的な損害の額を超えると考えるべきなのか、解釈によって結論に違いが生じてしまうとの指摘がある。実際にキャンセル料の妥当性が争われた裁判でも、平均的な損害についての判断は分かれている。

 平均的な損害の問題は21年にまとめられた消費者契約に関する検討会の報告書でも触れられている。報告書は問題の所在について、「法第9条第1号は、『平均的な損害』としか規定しておらず、違約金条項を定めるに当たって、具体的にどのような要素を考慮すべきかについては定めていない。そのため、消費者は『平均的な損害』について、具体的にどのような条項を主張立証しなければならないのかが分からず、また、どのような要素を考慮して事業者が違約金条項を定めるべきかを判断することが困難になっていると思われる」と指摘している。

 また報告書は「『平均的な損害』の額は、その事業者に固有の事情であり、その主張立証に必要な情報は事業者に偏在している事例が多い」ため消費者側が平均的な損害の額を立証することは難しいとしている。つまり、消費者・事業者の双方にとり不十分だと意見しているわけだ。

【続きは週刊トラベルジャーナル24年7月29日号で】

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