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日本ならではのトイレ巡りツアー

2024年6月24日 8:00 AM

 新聞記事である職場を巡るツアーを知った。そんな場所を見に行くのは、まさに日本ならではで外国人観光客に大人気とのこと。興味津々、参加してみることにした。申し込みは主催するライドシェア会社のサイトから行う。希望する日時を選んで申し込むのだが、予約の成否は後日メールで通知が来るまで分からず予定が立てにくい。

 当日はシティホテルの車寄せに集合。20人近くの人がいて、スタッフを探すが目立たない服装で見つけにくい。「参加者ですが」と言うとドライバーに申し出てくれという。ここまではオペレーションがまだまだ。3月から始まったばかりでスタッフはボランティア中心なので仕方ないか。

 出発時間となり指定された車に乗る。10人乗りワゴンタイプの貸し切りタクシーだ。参加者は外国人夫婦が2組、日本人夫婦が1組、女性誌の取材記者と僕の8人。申し込みサイトには「ガイドなし」と記載されていたが、自治体から派遣されたボランティアガイドが同乗した。訪問場所をプロが撮影したフォトブックとロゴ入りの水のほか、各施設の説明が入った閲覧用バインダーも各自に配布されたのはナイス。

 実はこのツアーの料金は高いと思っていた。訪れる場所(9カ所)は電車と徒歩で十分行けるし、入場料や許認可も不要。つまりお金を払わなくても見学可能だ。確かに車での移動は楽だが、ガイドが付かないのに2時間で5000円。しかし、これだけ充実していれば納得の金額なので、サイトへの情報掲載はしっかりやったほうがよい。

 「で、どんな職場に行くの?」とイライラしてきた読者もいるだろう。何を隠そう、公衆トイレである。とはいっても、あるプロジェクトの下、名だたるデザイナーの設計による立派な作品だ。

 さて出発。ガイドさんが英語と日本語で注意事項を説明する。「なお、このツアーにはトイレ休憩はありません」というくだりで、一瞬、間が空き、そしてドッと笑いに包まれる。外国人参加者が多いこともあり、和やかなムードだ。

 10分ほどで1カ所目に到着。住宅街にある緑の多い大きめな公園だ。ガイドさんに付いて園内に入り目指すトイレが見えると、「おお~!」と歓声が上がる。ガイドさんが細かく説明してくれるが、当然その間にも利用者がいる。「いったい何事?」と思っていることだろう。外国人夫婦はトイレだけでなく、あちこちの写真を撮りまくっている。そんなわけで集合の声がかかっても車に戻ってこない。ガイドさんも「今日は時間オーバーしちゃいそうね」と苦笑い。

 果たして最終的に30分超過で帰着。そもそも、2時間という設定がタイトだ。そのつもりで予定を組んでいる参加者もいるだろうから、時間超過はよろしくない。最初から2時間半にしておけば少しばかり早着しても問題ないことだ。

 全体的にいえば期待していたより満足度は高かった。ライドシェア、ボランティアガイド、点在する観光スポットという3要素を組み合わせたスタイルとして各地の参考にもなる。

黒須靖史●ステージアップ代表取締役。中小企業診断士。好奇心旺盛で旅好きな経営コンサルタント。さまざまな業種業態の経営支援に携わり、現場中心のアプローチに定評がある。