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障害は社会の側に 合理的配慮の義務化にどう対応?

2024年4月22日 12:00 AM

(C)iStock.com/designer491

障害者差別解消法が求める障害者に対する合理的配慮が、法改正に伴い事業者の「義務」となり、4月1日に施行された。観光関連事業者はどのように理解し、対応していけばいいのか。

 障害者権利条約が06年に国連で採択され、日本でも障害者基本法など国内法の整備が進められた。そうした取り組みの一環として16年4月に障害者差別解消法が施行され、事業者にもさまざまな対応が求められるようになった。同法は「すべての国民が障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現」するという趣旨に沿って、除去が必要と障害者が意思表明した社会的障壁について、「必要かつ合理的配慮をする義務がある」と定めている。

 以降、合理的配慮を提供することは事業者にとって「努力義務」とされてきたが、「義務」に変更する改正法が21年5月に成立し、今年4月1日から施行された。観光関連事業者も今回の義務化を受け、障害者対応に関する社内理解のさらなる浸透や体制の強化が求められている。

 この流れは、とりわけ障害者が旅行できる環境を整えようと早くから努めてきた旅行会社にとっては、当然なことと受け止められ、大きな戸惑いや混乱は感じられない。ただ、広く旅行・観光業界と消費者の双方に正しい理解が浸透していくまでには、一抹の懸念もあるようだ。

コロナ禍の空白を経て再び

 障害者権利条約の採択やバリアフリー法(高齢者、障害者等の移動等の円滑化に関する法律)の施行があった06年より以前から、一部の旅行会社では障害者旅行への対応を本格化した。クラブツーリズムは1997年に「バリアフリーの旅」をスタート。JTBは2000年に対外的な専門部署を開設し、02年からはバリアフリー旅行の「ソレイユ」を商品展開した。エイチ・アイ・エス(HIS)も02年に分野特化型の専門デスクとして「ユニバーサルツーリズムデスク」を開設して障害者の旅行需要の取り組みを強化。00年に施行された交通バリアフリー法(高齢者、障害者等の公共交通機関を利用した移動等の円滑化に関する法律)なども旅行会社の積極姿勢の背中を押した。

 その後、流れが変化したのは、16年の障害者差別解消法施行の前後だ。特別な旅行に位置付けられてきた障害者旅行を、他の旅行商品の枠組みの中でも幅広く取り扱っていく動きが強まった。JTBはバリアフリーをうたってきた商品に代えて、「エースJTB」「ルックJTB」など一般のパッケージツアーで対応する方向性を打ち出した。クラブツーリズムも15年にはバリアフリー旅行センターをユニバーサルデザイン旅行センターに拡充し、脚力の落ちた高齢者の参加も視野に入れ対象をより広くした「ゆったり旅」に力を入れることになった。17年にはバリアフリー専用ツアーに限定していたトラベルサポーター制度(介助を必要とする者がサポーターの力を借りて旅行する仕組み)を適用する対象も一般の募集型企画旅行に拡大している。

 特別な旅行から他と変わらない旅行へ、位置づけが変化すると同時に、健常者と同じ旅行に参加できる仕組みが試されるようになり、旅行商品の販売体制に関する改革が始まろうとしていた。対応を専門窓口や特定部署に集約するのではなく、どの店舗でも基本的に障害者の旅行に対応できる体制づくりにも着手しつつあった。

 ところが、そこへコロナ禍が襲い掛かる。HIS個人旅行営業本部販売事業部販売管理グループの猿渡充リーダーは「数年間は何かをできる状況ではなかった」とコロナ渦中の空白を嘆く。そしてようやくコロナ禍が明け、障害者の旅行意欲も戻りつつある現在、あらためて旅行会社が動き始めている。

【続きは週刊トラベルジャーナル24年4月22日号で】[1]

Endnotes:
  1. 【続きは週刊トラベルジャーナル24年4月22日号で】: https://www.tjnet.co.jp/2024/04/21/contents-223/