2024年3月4日 12:00 AM
時間外労働時間の規制強化に伴い危惧される2024年問題。4月からはバスドライバーや医師への適用も始まるため、ツーリズムへの影響も想定される。国内ツアーのバス手配や訪日外国人旅行者への医療対応はどのような変化を余儀なくされるのだろうか。
少子高齢化が進行し生産年齢人口の減少が避けられない日本にとって、生産年齢人口の就業機会の拡大や意欲・能力を発揮できる環境の整備は国家的な重要課題。その解決策の1つとして国が力を入れるのが働き方改革だ。改革の一環として19年に施行された働き方改革関連法(改正労働基準法)によって時間外労働の上限規制が始まった。しかし、物流業界をはじめ一部職種に関しては規制への適応に時間を要するとの理由で施行が猶予され、バス業界で働くバスドライバーや医療業界で働く医師なども施行猶予の対象だった。
この猶予期間が24年3月末で終了し、4月からはバスドライバーや医師もいよいよ時間外労働の上限規制の対象となる。また上限規制施行と共に改善基準勧告(自動車運転者の労働時間等の改善のための基準)なども見直され、拘束時間の上限についても規制が強化された。
コロナ禍で離職した担い手が戻らず待遇が良いとはいえないバスドライバーも、人口1人当たりの医師数が世界的に見ても少ないとされる医師も、いずれも慢性的な人手不足が続く。そんな状況の中での各種規制の強化は、良きにつけ悪しきにつけさまざまな影響が避けられない。悪しき影響にフォーカスすれば、それがまさしく2024年問題ということになる。
厚生労働省によれば、バスドライバーの労働時間は事業者の努力やコロナ禍の影響もあって、18年の年間2544時間から22年には2316時間まで減少している。それでも22年の全産業平均である2124時間と比較すれば労働時間はまだまだ長い。
法定労働時間は1日8時間・週40時間で、これを超えるのが法律上の時間外労働時間だが、改正労働基準法以前は、行政指導はあっても法律上の時間外労働時間の上限規制はなかった。しかし4月からはバスドライバーも改正労働基準法の適用対象となり、月間45時間・年間360時間が時間外労働の上限となる。臨時的にこれを超える必要がある場合には特例条項が設けられているが、それも年間960時間を超えることは許されない。
ちなみにこれらの規制は路線バスや貸切バスのドライバーだけではなく、旅館やホテルの送迎バスのドライバーなど、主として人の運送を目的とするバス運転業務に携わる者がすべて対象となる。
バスドライバーには、労働時間と休憩時間を合算した「拘束時間」や、勤務と勤務の合間の「休息時間」、実際にハンドルを握っている「運転時間」などを規制する改善基準勧告が設定されている。今回、バスドライバーの時間外労働の上限規制施行と同時に、拘束時間と休息時間の改善基準勧告についても基準の見直しが行われる。
拘束時間については、これまでの原則として1年3380時間が、4月以降は3300時間に80時間短縮される。貸切バスの場合は労使協定により延長はできるが、52週で3400時間という総拘束時間の上限が設けられた。1日の拘束時間については、13時間以内という原則は変わらないが、上限が16時間から15時間へ短縮された。3月までは「15時間を超える回数は1週間につき2回が限度」だったが、4月からは「14時間を超える回数は1週間につき3回までが目安」と改められた。
労使協定により拘束時間を延長する場合も、52週間のうち24週までは4週間を平均した1週当たりの拘束時間が68時間以内でなければならないとされた。3月までの「52週間のうち16週までは4週間を平均した1週当たりの拘束時間が71.5時間以内」との規制がより一段と強化された。
【続きは週刊トラベルジャーナル24年3月4日号で】[1]
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