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『日経トレンディ2024年1月号 2024-2030大予測』 旅行業界の知恵巡らす時期

2024年1月15日 12:00 AM

日経BP刊/850円

 今年こそ!というか近い将来こそ!という海外旅行の復活を願って今回取り上げるのは日経トレンディ誌の「2030 大予測」。テクノロジーの動向から読み解く未来予測、という内容で、キーワードは学習&創造できるAI、「生成AI」だ。よく話題になるのはAI作の絵画や小説などだが、現実世界ではロボット、医療、食品など各種産業の需要に合わせ急速に進化している。

 大がかりな開発は世界に後れを取る日本だが、きめ細かさ、アイデアは日本の得意とするところ。ガンダムが現実になる「乗れるロボット」、実験に使える「ミニ肝臓」、おいしい完全栄養食など、AIの力で実現に近づいたモノがこんなにあるのかと目を見張る。これらはいずれインバウンドを呼び込む観光アイテムの1つにもなりそうだ。

 業界に関連しそうなのはシニアや障がい者を助ける車椅子型移動車やマッハ1.7が出る超音速旅客機、空飛ぶタクシー、受け付け程度ならできそうなデジタルクローンなどがあるが、他業界が考案したものを待っているだけだと出遅れるような。おそらく簡単な旅行日程ならAIが組んでくれるはずで、AIツアーと人が作成したツアーで競合なんてこともあるかもしれない。

 インターネットの発展は大げさでなく業界のあり方を変えたと思う。もはやスマホなし、ネット予約なしでの旅は考えにくいし、旅行説明会や添乗員の存在理由も変わったと思う。ではこの生成AIは旅行者の行動をどう変えるのか。飛躍する仮想空間はついにリアルな旅を超えるのか。さらに速度や利便性を増す交通機関は旅程をどう変えるのか。そしてそもそも生成AIを業界の発展に使う術はないだろうか。

 アンテナを張り知恵を巡らすタイミングに来ているように思う。

山田静●女子旅を元気にしたいと1999年に結成した「ひとり旅活性化委員会」主宰。旅の編集者・ライターとして、『決定版女ひとり旅読本』『女子バンコク』(双葉社)など企画編集多数。最新刊に『旅の賢人たちがつくった 女子ひとり海外旅行最強ナビ』(辰巳出版)。京都の小さな旅館「京町家 楽遊 堀川五条」「京町家 楽遊 仏光寺東町」の運営も担当。