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キーワードで占う2024年 北陸新幹線延伸からDAOまで

2024年1月15日 12:00 AM

(C)iStock.com/Blackregis

さまざまな規制から解き放たれ、観光産業が真の再興に向けて歩む24年。新たな成長のドライバーを探す時期でもある。待ち受ける変化を18のキーワードから識者・記者が展望する。

<Keyword>海外観光旅行の回復 19年比7割も為替動向次第

 24年の海外旅行者数は1450万人、19年比でおよそ7割の回復率と予想している。海外旅行者数は最終的に1700万人前後までは戻すと予想しているが、このレベルに届くのは25年以降になりそうだ。

 旅行者数の回復がなかなか進まないのは1人当たり旅行費用がコロナ前を3割も上回る水準に高騰しているためだが、視点を変えて旅行者数そのものではなく旅行者が支出する総消費額に注目すると24年は19年を若干上回るところまで回復する。旅費の上昇で消費額は膨らむが旅行者数は抑制される。この構図は少なくとも今後2~3年の間は大きく変わらないだろう。

 22年半ば以降の急激な円安で旅行マインドに対する為替レートの影響力は大変強くなっている。23年の海外旅行者数は7~10月の4カ月間、19年同月比で45%の±1%の範囲で停滞していたが、これは円ドルレートが1ドル140円を突破し150円超まで上昇した時期に相当する。上述の海外旅行者数予測は24年前半のレートを1ドル140円台前半、年後半を130円台後半で想定しているが、もしこの通りになった場合、140円台で推移する24年前半までは引き続きゆっくりとしたペースの回復が続く可能性が高い。

 一方、これだけ為替が注目される状況なので正反対のことも起こりうる。つまり日銀の政策変更などをきっかけに比較的短期間に130円台前半あるいは120円台に到達するような急速な円高が起きて旅行者数が劇的に回復し、上記の予想がすっかり外れるという展開だ。まるでばくちのような話で恐縮だが24年という年にはそんな時の備えも必要ではないかと考える。

黒須宏志●JTB総合研究所フェロー。京都大学文学部卒業後、1987年JTB入社。89年に財団法人日本交通公社に移籍。2013年12月からJTB総合研究所に出向、主席研究員。15年4月執行役員。19年4月から現職。旅行市場動向のリサーチャーとして講演・寄稿などで活躍する。

<Keyword>2024年問題 バスツアーのあり方考える契機に

 4月に自動車運転業務の労働規制が強化される。それに伴う多くの課題が「2024年問題」と総称される。

 時間外労働の年間上限時間の短縮が規制強化の目玉だが、バス事業においては、退勤から次の出勤までのインターバルが従来の8時間から9時間(努力目標は11時間)以上に延長される点の影響が大きいと見ている。

 路線バス、高速バスはダイヤの組み換えで対応するが、貸切バスの対応が難しい。募集型企画旅行や教育旅行など業務内容は毎日異なり、前後の日の業務を従来以上に考慮しながら勤務を割り当てる必要があるからだ。

 特に国内旅行会社によるツアーは、乗務員の拘束時間が規制上限に近いものが以前から多かった。慢性的な人手不足もあり、ツアーの受注に慎重になる事業者が増えそうだ。

 もっとも「苦行」「引き回しの刑」ともやゆされる、立ち寄り地点の数をうたうようなツアーを好む顧客は相当高齢化していると思われる。旅行会社にとって、新たなターゲット選定と合わせてツアーのあり方を考える契機ともいえる。FITを対象とする着地型ツアーの充実も求められる。

 なお、これらの規制は実際の労働時間が対象で、渋滞による遅延が原因でもバス事業者への行政処分の対象となる。受注を優先し甘い運行計画を立てた事業者は、結果として違反となるリスクを負う。旅行会社には、貸切バスの手配に際し従来以上にプロとしての目利きが求められる。「万一の事故の際、その事業者を信頼し発注した理由を正々堂々と説明できるか」がバス事業者選びの基準だといえよう。

成定竜一●高速バスマーケティング研究所代表。1972年生まれ。早稲田大学商学部卒。ロイヤルホテル、楽天バスサービス取締役などを経て、2011年に高速バスマーケティング研究所設立。バス事業者や関連サービスへのアドバイザリー業務に注力する。国交省バス事業のあり方検討会委員など歴任。

【続きは週刊トラベルジャーナル24年1月15日号で】[1]

Endnotes:
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