2023年12月18日 12:00 AM
国土交通省関東運輸局はにっぽん丸と同船を所有する商船三井クルーズに対し、船員の労働時間の上限超過や記録の組織的な改ざんがあったとして、12月6日付で是正命令を発出する行政処分を行った。船員法第107条の規定に基づく立ち入り検査の結果、複数の違反の事実が判明した。同社は社内調査結果と改善策を報告したうえで、早期の是正に向けて関東運輸局から引き続き厳格な指導・監督を受けることになる。
船員法に基づく是正命令が出されたのは「確認できた範囲では全国で初めて」(関東運輸局)だという。法令違反とされたのは、22年12月と23年8~9月、少なくとも4人の日本人船員に、船員法に定められた労働時間の限度(1日当たり14時間、および週72時間)を超えて作業に従事させていたこと。この事実を隠すため、本社に備えておく労務管理記録簿、報酬支払簿、給与支払明細書等にも、実際の労働時間に基づかない虚偽の内容を記載していた。さらに立ち入り検査の際、改ざんした労務管理記録簿を提出し、それについて虚偽の説明をした。
関東運輸局によると、今回の立ち入り検査は当初、通常の定期監査の一環として行われた。18年12月にグアム島で船長の操船による桟橋接触事故を起こし、行政処分として輸送安全確保命令が出されてから5年を経過したことのフォローアップと、船員の働き方改革として22年4月にスタートした改正船員法に基づく取り組みの推進状況を確認するのが目的だった。
しかし、昨年8月28日の検査で不審な点があったことから、9月に再度検査を実施。さらに10月には本社にも立ち入り検査を行って調べ、複数の違反行為が判明した。
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