2023年8月28日 12:00 AM
近畿日本ツーリスト(KNT)による新型コロナウイルスワクチン接種に係る業務での過大請求問題に関し、KNT-CTホールディングスは8月9日に記者会見し、調査委員会の報告書に基づき問題の原因について説明した。過大請求は最大で約50自治体、約9億円と見積もられ、KNT社員4人が詐欺罪の疑いで逮捕、起訴される事態に至った。その背景として報告書は主に4つの問題点を挙げ、それらが構成する企業風土が根本原因だと総括した。
指摘されたのは、①利益追求指向、②各人の行為の妥当性と適法性に対する意識の希薄化、③管理体制の脆弱性、④階層間の正確な意思疎通や現場の問題を進言する風土の欠如だ。この企業体質に起因するコンプライアンスの不徹底、ガバナンスの機能不全、自浄作用の不備など「組織体に蓄積した負の部分」が、「新たな事業領域に取り組む過程ではからずも露呈した」とし、企業風土に関わる根の深い問題があったと厳しく断じた。
KNT-CTはこれを受け、不正を発生させない組織構造改革を進める。社内にコンプライアンス委員会と改革本部を設け、KNTとクラブツーリズムには内部通報の窓口を兼ねた法令倫理センターを置いた。グループ全社員と経営層が直接対話する場も設けるなど、風通しの良い職場環境を整備する。新設予定のコーポレートアカデミーでは、新たなグループ共通の行動規範を浸透させ実践を図る。また、予算や目標設定に関するマネジメントコントロールや経営管理機能はKNT-CTに集約する。
関係者の処分では、問題の責任を取ってKNTの髙浦雅彦代表取締役社長が8月31日付で辞任。KNT-CTの米田昭正代表取締役社長ら役員3人は報酬の一部を自主返納する。
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