2023年6月26日 12:00 AM
海外旅行機運、いまいち盛り上がらないようですねー。
理由はいろいろ付けられるけど、やっぱり興味が薄れているんだと思う。先輩や同僚から聞く旅の土産話やSNSにアップされるステキ海外写真に触れる機会がぐんと減り、メディアも露出情報が薄い。生活が大変ななか、わざわざ渡航する意味が見当たらないのだ。
「一生に一度でいいからイギリスにいきたい、お姫様のような旅がしてみたいわ」
80歳を超えた著者の祖母の発言から始まるこのお話を読んで、(ああ、その昔、海外旅行ってこういう位置づけだったよな)と、まず思った。
一般家庭なら「おばあちゃんたら、またー」で終わりそうだが、著者の一族は違った。なら資金を出すので留学経験がある孫(著者)が連れて行け、と話は進み、日系エアのファーストクラス/ロンドンの5つ星ホテル/一流店での買い物や最高のディナー、という豪華5泊7日の旅が実現したのだ。
金は出されても経験と知識はついていかない。若い著者には初めてのファーストクラス、初めての五つ星、初めての介護旅行。気後れしまくりの著者は機内でCAにホスピタリティーの手ほどきをお願いする。姫様らしくどっしり構えサービスを享受する祖母と違い、観光や食事の手配にドタバタする著者を支えるのはホテル(サヴォイかクラリッジスかな?)のスタッフだ。
正直、このクラスの宿のバトラーがここまで踏み込むかなあという気もしないでもないが、著者を励ます彼らの言葉には、旅や人生を楽しむヒントやコツが詰まっている。祖母姫のキャラの良さも相まって、旅って良いな、人生に必要だな、なんて思える作品だ。日本人よ、海外に行こう。
山田静●女子旅を元気にしたいと1999年に結成した「ひとり旅活性化委員会」主宰。旅の編集者・ライターとして、『決定版女ひとり旅読本』『女子バンコク』(双葉社)など企画編集多数。最新刊に『旅の賢人たちがつくった 女子ひとり海外旅行最強ナビ』(辰巳出版)。京都の小さな旅館「京町家 楽遊 堀川五条」「京町家 楽遊 仏光寺東町」の運営も担当。
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