2023年6月19日 12:00 AM
政府が6月13日に閣議決定した23年版「観光白書」で、国内観光サービスの付加価値額を示す観光GDPが日本は欧米の主要国に比べて低く、向上に取り組む重要性が指摘された。観光従事者1人当たりのGDPや報酬額も見劣りする。客単価を引き上げ、就労者、地域、産業へと好循環を生む持続可能な観光を目指す施策を展開する必要があるとした。
GDPは売り上げから原価などを差し引いたもうけで、観光産業の直接的な経済効果や雇用効果の大きさ、すなわち稼ぐ力が分かる。日本の観光GDPは19年に11.2兆円で、旅行・観光サテライト勘定導入国の中で米国、ドイツ、イタリアに次ぐ規模。ただし、その国のGDP全体に占める比率では、日本は2.0%でG7各国や欧米7カ国の平均4.0~4.5%に比べると低い。
観光産業就業者1人当たりのGDPも米国(1122万円)やスペイン(898万円)に対し、日本は491万円とその差が極めて大きい。雇用者の報酬は、米国555万円、スペイン465万円で、日本の254万円を大きく上回る。客単価の拡大などによるGDPの引き上げを求めた。
すでに効果を上げている地域の事例もある。群馬県の伊香保温泉では主要施設が個人客をターゲットに設備を改修したところ、高価格帯を中心に客室稼働率が向上。単価がコロナ前より上昇した。兵庫県の城崎温泉では、個々の宿泊施設の予約や在庫の情報を集約し可視化するシステムの整備や予約サイトの運営が奏功。代表的な施設では賃金水準の引き上げにつながった。
観光産業は生産性の低さやデジタル化の遅れなど構造的な課題を抱えている。白書では、解決に向け、DXとともに従事者の待遇改善も併せて推進することが必要と指摘した。
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