2023年3月13日 12:00 AM
「その情報にはバイアスがかかっているので信用できない」
なんて、いつの頃からかよく耳にするようになった「バイアス」。偏見・先入観など思い込み、あるいは情報の偏りなどを意味し、これが認識のゆがみを起こすことを表現している。洪水のように情報が流れてくる現代社会では誰もがハマる落とし穴だ。
この認知バイアスを誰にでもわかるように整理し、具体例とともに事典形式で紹介しているのが今回の本。シリーズ2作目で、1作目は論理学・認知科学・社会心理学から、本作では行動経済学・統計学・情報学の3つの分野から認知バイアスを引き起こす原因や実例を紹介している。
グラフの作り方で誤解を誘導したり、昼間に電話で回答してくれるタイプの人の意見が反映されてしまう世論調査などが統計学的アプローチ。生き残った人や撃墜されなかった戦闘機の意見や機能が資料となってしまう生存者バイアス、メディアやネットの情報にさらされるうち世界は意地悪なものだと感じてしまう意地悪世界症候群などが情報学的アプローチ。
ビジネスにおいては、実際のケースを思い浮かべやすい行動経済学的アプローチが興味深いかもしれない。DMの開封率を大幅アップさせた損失回避性の例や、多すぎる選択肢(商品)がネガティブな効果を生み出す選択肢過剰、人は松竹梅の選択肢があると竹を選びがちという極端性の回避など、素人としてはヘェ~と言いたくなる項目が多い。これを応用すれば……とも思いたくなるが、まあ、そんなに世の中は甘くはない。ただ、霊感商法や陰謀論、意図的な統計や価格操作などにだまされない予備知識として、そして雑談のネタにはぴったりだ。
山田静●女子旅を元気にしたいと1999年に結成した「ひとり旅活性化委員会」主宰。旅の編集者・ライターとして、『決定版女ひとり旅読本』『女子バンコク』(双葉社)など企画編集多数。最新刊に『旅の賢人たちがつくった 女子ひとり海外旅行最強ナビ』(辰巳出版)。京都の小さな旅館「京町家 楽遊 堀川五条」「京町家 楽遊 仏光寺東町」の運営も担当。
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