旅のサブスク3年の評価 成功と失敗の分岐点

2022.11.07 00:00

(C)iStock.com/Shutter2U

定額課金のサブスクリプションをうたうサービスが相次ぎ登場したのが19年。あれから3年が経過し、市場は着実に拡大を続け、新規参入が途絶えることはない。一方で、撤退を余儀なくされた取り組みもある。成否を分ける鍵とは。

 定額課金のサービスは以前から存在していたものの、サブスクリプションサービス、いわゆるサブスクとして注目を集めたのは19年ごろからだ。日本を代表する企業のトヨタ自動車がこの年に自動車販売のサブスク型サービス「KINTO」を立ち上げたのが象徴的で、流行語大賞にもノミネートされた19年はサブスク元年と呼ばれた。

 その前後から、ハイブランドのバッグを定額でレンタルするラクサスや洋服のエアークローゼット、さらにはシェフや家具・家電までがサブスク化されて登場。そして最も成功している音楽・映像配信に宿泊や旅行を加えた娯楽分野と、サブスクは衣・食・住・車・娯楽等々の幅広い分野で市場を拡大してきた。

 一方で、流行に乗って続々と誕生したサービスは、世界的に見てもその後明暗が分かれた面がある。米ストリーミング大手のネットフリックスは22年第1四半期に会員数が10年ぶりに減少に転じ、第2四半期も再び減少した結果、初めて2期連続の会員減となった。同社の場合、サブスクビジネスの曲がり角というよりも、コロナ禍で会員数が急増した反動やロシアからの撤退といった要因が絡んだ結果のようだが、サービス乱立後の宿命として明暗が分かれるのは当然の現象だ。

 ファッション業界ではZOZOやAOKI、レナウンなどが進出したが、すでに撤退している。観光業界では、三井不動産ホテルマネジメントが21年に2種類の月額定額プランを開始し、好きなホテルを毎日選んで利用できる「HOTELどこでもパス」と気に入ったホテルに長期滞在する「HOTELここだけパス」を設定したが、その後、前者は終了している。このほか、ホテルチェーンが定額制で泊まり放題プランを設定したものの、コロナ禍もあって施設の安定稼働ができないために撤退を余儀なくされた事例もある。

途切れない観光分野での参入

 しかし、観光業界では依然としてサブスクへの熱意は薄れていないようだ。

 いまや旅のサブスクの代表格となったKabuK Style(カブクスタイル)をはじめ、ADDress(アドレス)が宿泊を軸とした定額利用サービスを立ち上げると、日本航空(JAL)と全日空(ANA)はそれぞれ連携して航空券定額サービスの本格展開を模索している。ANAはアドレスと組んで20年に実証実験を実施。JALはカブクスタイルが運営する「HafH(ハフ)」で昨年と今年の2回にわたって実証実験を行っている。これに続き、ピーチ・アビエーションは昨年、全路線1カ月乗り放題の「Peachホーダイパス」を販売して話題を提供。さらに内容で踏み込んだのがスターフライヤーで、福岡県内の賃貸住宅と東京/福岡間の航空券をセットにしたサブスクを来年春に立ち上げるという。

 事業主体や領域は広がりを見せており、レジャー業のプロデュースを手掛けるオリグレスパークスは「レジャパス!」で月間や年間パスを開始。加盟施設には東京タワーや太秦映画村など数多くのテーマパークや美術館、水族館、動物園、サウナなどが名を連ねた。旅行会社では、クラブツーリズムが21年10月に始めた月額定額制サービスで、趣味のクラブ活動が利用し放題となるほか、会員限定イベントなど特典を提供している。

 地域への誘客と域内周遊を促す手段として、DMO(観光地域づくり法人)もサブスクのコンセプトに着目する。ひがし北海道自然美への道DMOは都市・地域間バスなどが乗り放題となる交通パスと、観光施設や自然体験、食事などで使える体験パスを整備。検証を重ねている。

【続きは週刊トラベルジャーナル22年11月7日号で】

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