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超音速機は再就航するか

2022年11月7日 12:00 AM

(C)2022 Boom Supersonic

 9月15日の英フィナンシャル・タイムズは、米ブーム・スーパーソニックが開発中の超音速機とその就航に懐疑的な識者の意見を紹介している。オーバーチュアと呼ぶ4発エンジンの超音速機は最大巡航速度マッハ1.7、すなわち音速の1.7倍で飛ぶ。亜音速でもマッハ0.94で従来の旅客機のマッハ0.75~0.85より速い。全長約61mで航続距離7871km。最大で旅客65~80人を運ぶ。比較してB787-8は旅客約250人で1万3620kmを飛行する。同社は同機の運航できる世界中の600路線を特定した。飛行時間がほぼ半分に短縮される。ニューヨーク/ロンドンは6.5時間が3.5時間、東京/シアトルは8.5時間が4.5時間になる。

 現在、オーバーチュアには130機の注文がある。アメリカン航空は8月末に20機発注してデポジットを納め、追加して40機のオプション契約をしている。日本航空は17年に20機を先行予約した。ユナイテッド航空は21年に米国で最初の発注者となっている。ブームのブレーク・ショルCEOは「この航空機には数千とはいわないが数百機の需要がある」という。世界最大の航空会社数社からの発注は、このプロジェクトに対する信用にはなる。しかし多くのアナリストや航空会社幹部は解決すべき課題があまりに多く、超音速機の実現は難しいと考えている。

 第一にこれほど多くの超音速機の市場が存在するのかに疑問がある。かつて14機のコンコルドが就航したが、エールフランスもブリティッシュ・エアウェイズも太西洋線の限られた路線に使用しただけだった。現在、発生する衝撃音のために地上の超音速飛行は禁止されている。

 ブームはオーバーチュアが100%持続可能な航空燃料(SAF)を使用するので環境にやさしいと宣伝する。しかし同機は亜音速機より1席当たり7倍も燃料を消費する。マサチューセッツ工科大学によると良質なSAFでも1座席キロ当たりCO2排出は最大24%減少するだけで、それ以外にも超音速機は酸化窒素や水蒸気などの大気汚染が発生するという。また燃料消費が飛躍的に増加すると、需要に見合うSAF供給が不足するので必然的に燃費は高騰する。どこの航空会社が旅客1人当たり約20倍と予想される燃料を利用するだろう。

 記事はまたオーバーチュアのエンジンメーカ―、プロジェクトのパートナーが明らかでないことを問題視しているが、ブームは数カ月以内に革新的エンジンを発表するとしている。ショルCEOは「それは単にエンジンのテクノロジーの問題ではなく、サステナビリティーと経済性の改善を導くブレークスルーの問題」という。投資家とアナリストは小型プロトタイプ宣伝モデルの開発を注目する。年末までに実施する予定のテスト飛行は、これまで発表期日から数回延期されている。

 資金調達の問題もある。14年の創立以来、同社は投資家から6億ドルを集めたが、航空機の完成までにさらに数十億ドルが必要だ。ショルCEOはコンコルドの引退から20年を経て超音速機の需要創出と技術で超音速旅行を利益のある事業にすると述べ、最初の旅客便が就航する29年までに需要は急速に伸びると信じている。コンコルドを座礁させたのは、高い燃費と限られた人だけが利用できる非常に小さな市場だった。