2022年10月17日 12:00 AM
観光目的の外国人の新規入国が再開された6月10日以降も、市場の戻りは鈍く期待されたほどの反応はなかった。10月11日以降の水際対策緩和が朗報であることには間違いないが、果たしてどこまで外国人観光客が増えるのか、不透明さも残る。
政府は10月11日から新型コロナ感染症対策として講じている水際対策を大幅に緩和した。入国者数は1日当たり5万人までという上限規制が撤廃され、入国者全員に義務付けられていたビザ取得も緩和し短期滞在者はビザ取得が免除されることになった。パッケージツアーに限定されていた旅行形態についても個人旅行が解禁となった。コロナの感染が疑われる症状がある者以外は入国時検査も実施しない。これに伴い、ウイルスの流入リスクに応じて各国・地域を青・黄・赤の3グループに分けていた区分も廃止されている。
入国のハードルとして残ったのは、ワクチン3回接種の証明、もしくは72時間以内に受けたPCR検査で陰性証明することだ。
また水際対策の大幅な緩和に伴い、全国10空港に限定されてきた国際線の受け入れも、準備が整った空港から再開。航空座席供給の増大も図られていくはずだ。
入国者数の上限規制撤廃、ビザ取得の免除、個人旅行の解禁、航空座席の確保という、外国人観光客の日本入国を抑え込んできた4つの大きな阻害要因が取り除かれたことで、今後の需要回復に期待が高まる。しかし過去を振り返れば安心はできない。これまで日本が小出しにしてきた水際対策の緩和の効果は乏しく、訪日外国人観光客の回復ははかばかしくなかったからだ。観光目的の外国人の新規入国を2年2カ月ぶりに6月10日から再開したものの、需要回復の足取りは弱々しいままだった。
外国人観光客の受け入れ再開後、水際対策も段階的に緩和されてはいる。9月7日からはワクチン3回接種を条件にPCR検査証明が不要となり、添乗員同行のパッケージツアー参加者に限定されていた観光客の入国要件を、添乗員が付かないパッケージツアーにも認め、入国者数の上限も1日2万人から5万人に引き上げられた。しかし、水際対策の緩和に比例してインバウンドが回復するという目論見通りにはなっていない。
日本政府観光局(JNTO)によると7月の訪日外国人旅行者数は14万4500人で19年比95.2%減、8月も16万9800人で93.3%減だった。しかも観光目的の外国人入国者数に限れば、7月は7903人にとどまった。8月は1万826人で7月に比べれば37%増だが低水準から抜け出せていない点は変わらない。
入国者健康確認システム(ERFS)における9月21日時点の外国人観光客の入国希望者数も9月22~30日が8524人、10月1~31日が3万6213人、11月以降の合計が5万4734人。9月21日時点で日本入国を希望している外国人観光客は10万人に満たないわけだ。
日本としては水際対策を緩和してきたつもりでも、G7各国と比較すれば、これまでは厳格な水際対策が残されたままだった。ウィズコロナシフトという世界の潮流から取り残され、ジャパンパッシングが加速してしまう懸念も高まっていた。観光庁の和田浩一長官も、10月11日からの大幅緩和が発表される前の記者会見では「ビザ取得義務の撤廃、個人旅行の解禁などはインバウンドの本格的再開に向けての課題であると認識している。観光庁として旅行業界等からこうした水際対策のさらなる緩和について強い要望をいただいている」とコメントしている。
こうした状況を受けて政府はようやく10月11日からの上限規制撤廃、ビザ取得の免除、個人旅行の解禁等を決断した格好だ。
しかし、今回の大幅な水際対策の緩和によっても外国人観光客がどこまで増えるかは不透明だ。最後に残った入国条件であるワクチン3回接種は決して低いハードルではない。3回接種が行き渡っている国・地域は世界的に見れば少数派で、ワクチン接種に代わるPCR検査を費用負担を含めて手軽に受けられる国・地域も決して多くはない。
【続きは週刊トラベルジャーナル22年10月17日号で】[1]
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