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『ひまわり 50周年HDレストア版』 あらためて気づく戦争の過酷さ

2022年8月29日 12:00 AM

ヴィットリオ・デ・シーカ監督/1970年/イタリア/アンプラグド配給・宣伝
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 その昔、実家にあったLPレコード(!)「名作映画大全集」でいちばん好きだったのが悲しげなピアノで始まる「ひまわり」だった。たぶんテレビのロードショー番組で映画も見ているのだが、なにせ子供には難しく、内容はほとんど記憶に残っていなかった。

 だが、昨今のウクライナ情勢を受けリバイバル上映されている本作を見てみると、なるほど名作!なのだった。

 舞台は第2次世界大戦下のイタリア。野生的なナポリ娘のジョバンナは兵士アントニオと恋に落ち、即結婚。しかし甘い生活は長く続かず、兵役を逃れるため装った仮病がばれ、アントニオは過酷なソ連戦線に送られてしまう。終戦後も戻らぬ夫の生存を信じるジョバンナはソ連へ旅立ち、イタリア軍がいたというウクライナ南部を訪れ無数の墓標が並ぶ丘をさまよい、夫の消息を尋ね歩く。かすかな手掛かりをもとにモスクワ郊外に行くと、そこにはロシア女性マーシャと子供がいた。戦場で瀕死となり記憶を失ったアントニオは、助けてくれたマーシャと結ばれていたのだ。絶望したジョバンナはアントニオを振り切り列車に飛び乗る―。

 なんといっても主演2人が圧倒的。ソフィア・ローレンの芯のある美しさ、マルチェロ・マストロヤンニのチャーミングがベタといえばベタな悲恋物語に説得力を与え、そこにウクライナのひまわり畑やソ連時代のモスクワ、ナポリの海、ミラノ駅など魅力的な背景が加わって観光映画としても楽しめる。1970年の公開当時は特に日本で人気が高かったというのも納得である。

 ロシアとウクライナの関係や戦争の過酷さにあらためて気づかされる、っていうのもあるが、いまさらながら、名画といわれるものはやはり一度は見る価値があるのだなと思ったのでした。

山田静●女子旅を元気にしたいと1999年に結成した「ひとり旅活性化委員会」主宰。旅の編集者・ライターとして、『決定版女ひとり旅読本』『女子バンコク』(双葉社)など企画編集多数。最新刊に『旅の賢人たちがつくった 女子ひとり海外旅行最強ナビ』(辰巳出版)。京都の小さな旅館「京町家 楽遊 堀川五条」「京町家 楽遊 仏光寺東町」の運営も担当。