2022年8月22日 12:00 AM
危機的状況にあるローカル鉄道をめぐり、国、自治体、鉄道事業者が抜本的な改革を迫られている。国土交通省の有識者検討会は先ごろ提言をまとめ、人口減少時代にふさわしい地域公共交通へと再構築するため、改善策を協議する仕組みの立ち上げを求めた。対象は1㎞当たり1日平均利用者(輸送密度)1000人以下の路線が目安。競争力の回復はもとより、他の輸送手段への移行も検討する。
JR東日本が7月に初めて公表した路線別収支によると、輸送密度2000人未満の35路線66区間すべてが19年度に赤字だった。JR西日本も全17路線30区間が赤字で、ローカル線の厳しい収益環境があらためて浮き彫りになった。長年に及ぶ沿線人口の減少・少子化、マイカーへの転移等による利用者減に加え、コロナ禍の影響でリモートワークが定着。今後も元には戻らないことが予想される。
提言では、沿線自治体や事業者の要請を受けて国が「特定線区再構築協議会(仮称)」を設置し、地域のモビリティーのあり方について検討を進める。1時間当たりの利用者が500人を上回る駅間がある場合は対象から除く。存廃を前提とせず、自治体が駅施設や車両を保有し事業者は輸送サービスに特化する「上下分離」、観光列車の活用、バス・BRT(バス高速輸送システム)への移行などを広く検討し、3年以内に結論を出す。国に対しても、新たな輸送サービスへの支援や柔軟な運賃制度の導入を検討すべきとした。
検討会は、事業者が減便や駅の無人化などで対処してきたため市場ニーズと乖離し、国や自治体も危機感を抱かず有効な手を打たなかったと指摘。「これ以上の問題先送りは許されない」と強い問題意識を示している。
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