訪日観光再開、事業環境に変化 東アジアから市場シフト 回復は緩やか

2022.06.06 00:00

 6月10日から約2年2カ月ぶりに観光目的の外国人の入国が再開され、ようやくインバウンド回復への道が開けた。政府は1日当たり入国者数上限を2万人に緩和し、6月中には首都圏や関西など5空港に限定している国際線の受け入れを新千歳と那覇にも広げる方針だ。しかし当面は、旅行会社か旅行サービス手配業者が受け入れ責任者となる添乗員同行ツアーに限られる。市場の7割を占めていた東アジアは水際措置を継続中のため、顧客対象など事業環境は大きく変化しそうだ。

 「海外から問い合わせが殺到しており、インバウンド熱を実感している」。JTBの山北栄二郎代表取締役社長は再開に喜びを示す。22年度の訪日旅行市場の回復予想はコロナ前の2~3割程度。「たちまち大きな数にはならないのではないか」(同)と見る理由の1つは入国者数制限だ。緩和されたとはいえ、日本人含め14万人が入国していたコロナ前には程遠い。

 国際線の再開や増便が進む中部空港は従来、便数の4割を中国が占めていたが、5月1日時点の8都市24便のうち8割が東南アジア。「中国線が戻ってくるとしても、おそらく首都圏から。プロモーションの対象を東南アジアに移して増便を働きかける」(永江秀久取締役執行役員営業推進本部長)

 一方、「早い段階でコロナ前の水準に戻る」(JTB山北社長)と期待されるのが欧米豪だ。消費単価が高いアドベンチャー旅行の有望市場として官民が受け入れ環境を整えてきた。日本政府観光局(JNTO)は航空運賃の高騰などから富裕層がまず動き出すと見て、重点分野に位置づける。ただ、パッケージツアー利用は3割という自治体の調査もあり、FIT が市場の中心。今後の規制緩和に左右されそうだ。

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