GoToの制度設計 産業界が望む2.0から訪日・海外版まで

2021.11.29 00:00

(C)iStock.com/nikkimeel

緊急事態宣言とまん延防止等重点措置が9月末で全面解除され、GoToトラベル再開への期待が膨らむ。昨年のGoToトラベルは国内旅行需要を押し上げた一方で制度設計の不備から観光の現場が大混乱した苦い記憶もある。来年予定されるGoToトラベル再開へ産業界はどのような制度設計を望むのか。

 総選挙の結果を受けて岸田文雄首相は11月1日の記者会見でコメントを発表。「経済再生に向け、消費を喚起するため安全・安心な形に見直した上でGoToトラベルの再開を検討していく」と述べ、GoTo再開に取り組む意向を正式に表明した。11月中旬に発表される岸田内閣の大型経済対策に盛り込まれる見込みだ。

 再開された場合のGoToトラベルの内容は、岸田首相が自民党総裁就任以降に述べている関連コメントからみて、昨年のそれとは異なるものになりそうだ。10月中旬にはGoToトラベル見直しに関し、中小企業の裨益につながる工夫を加えることや平日利用の優遇・週末の混雑回避を図りたい意向を表明している。

 求められるのは「GoTo2.0」というべき新たな制度だ。経済同友会は10月21日に発表した「観光産業を取り巻く課題に対する緊急提言」で、休日や春休み・大型連休等の割引率を縮小し需要偏在の解消を図ることや、ワクチン接種証明書や陰性証明書を活用したいわゆるワクチン・検査パッケージの提示を適用条件とすること、申請からクーポン配布まで完全デジタル化することなどを提案。また、マイクロツーリズム活性化を念頭に宿泊を伴わないアクティビティーなどの旅行商品も対象とすることを求めた。

 星野リゾートの星野佳路代表は、昨年のGoToトラベルでは都市部のホテルに恩恵がなかったとして、都市部のホテル需要の本格回復につながる訪日旅行客が戻るまでキャンペーンを継続することを要望している。

 国土交通省と観光庁はGoTo2.0実現への準備を進める。斉藤鉄夫国交相は10月26日の記者会見で「ワクチン・検査パッケージ等の活用による安全・安心の確保を前提とした仕組みとする必要があると考えており、現在実施しているワクチン・検査パッケージの技術検証結果等を踏まえ、その時期についても検討していく」と述べている。

 ワクチン・検査パッケージは政府の新型コロナウイルス感染症対策本部が9月28日に決定した「新型コロナウイルス感染症に関する今後の取り組み」に盛り込まれているアイデアで、旅行、飲食、イベントの各分野で技術検証することが決まっている。観光に関する技術検証を担当する観光庁は旅行会社が実施するツアーや宿泊施設を対象に、ワクチン接種歴の確認や事前の検査オペレーションの検証に着手。10月初旬には旅行会社が実施するツアーで実証実験を開始し、中旬には宿泊施設を加えて検証作業を実施している。

 日帰りバスツアー、鉄道や航空を組み込んだパッケージツアー、宿泊プランに関して検証を行うほか、宿泊に関しては小規模旅館からビジネスホテル、大型ホテルまで検証。ワクチン接種歴やPCR検査等の結果通知書の確認といった実務面の運用確認を目的としており、観光庁の和田浩一長官は「一連の運用がスムーズに行われるか、現場や旅行者の負担がどれくらいか。感染防止効果も含め検証し、うまく回るか確認したい」という。

 斉藤国交相は「宿泊は10月で終え、ツアーは11月14日まで実証を行い、11月のできるだけ早い段階でワクチン・検査パッケージの運用方法を定めるガイドラインを作る」としている。

早期再開より慎重な設計を

 GoToトラベル再開に対する生活者の期待も、感染状況の好転に伴い高まりつつある。朝日新聞社が11月に実施した全国世論調査の結果を基に報じた記事によると、GoToトラベル再開の是非については賛成52%で反対の39%を大きく上回った。ただし、GoToトラベル実施時期については必ずしも早期再開が求められているわけではない。

【続きは週刊トラベルジャーナル21年11月29日号で】

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