訪日旅行、アジア牽引から変化か ワクチン接種や渡航規制で

2021.11.22 00:00

 水際対策のさらなる緩和により、外国人の新規入国は11月8日から商用や留学生などに限って認められることとなった。観光は対象外だが、政府は年内にも行動管理型のツアーを試行する方針を示しており、訪日旅行再開へ展望が開けつつある。ただ、市場構成には変化が生じそうだ。約7割を占めるアジアが国境再開に慎重なためで、日本入国時の行動制限緩和の要件となるワクチン接種も影響するとみられる。

 世界観光機関(UNWTO)の調査によると、217カ国・地域のうち7月時点で国境を完全に閉鎖しているのは29%。欧州13%、米大陸20%だが、アジア太平洋は70%と突出している。

 なかでも中国の規制は厳しく、政府の海外旅行自粛要請により、日本への観光は実質的に不可能な状況だ。訪日旅行者数で上位の他の東アジア諸国も旅行自粛が続く。一方、欧州では、スペインは渡航規制を設けておらず、帰国時もワクチン接種証明などの提示で済む。英国はワクチン接種者に限り、10月から観光目的の渡航が認められ、帰国時の隔離も免除された。日本政府観光局(JNTO)によると、ワクチン接種などで隔離が免除されるのは16カ国(10月27日時点)、大部分が欧米だ。

 また、日本側では現在、入国時の待機短縮に認めるワクチンの対象を米英製に限定している。見直しは不透明だが、中国製の使用率が高いアジアでは訪日旅行の足かせとなりかねない。

 JNTOの蔵持京治理事は、「以前の調査では、海外旅行は近い場所から行きたいと回答していた人が多いが、必ずしも近いところからではなく、国境が開いている国から交流がスタートする」と見通す。今後の訪日市場構成の変化については「さまざまなシミュレーションが必要」としている。

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