羽ばたけ地域の翼 連携と新モデルで支えるネットワーク

2021.11.22 00:00

(C)iStock.com/Denja1

地域に根ざした航空会社をめぐる動きが活発化してきた。人口減少による需要減など、経営を取り巻く環境が厳しさを増す一方、生活路線として果たすべき役割は大きい。共通の課題を抱えるなか、同業者間での協業や連携、そして新たなビジネスモデルが生まれている。

 ひとくちに“地域の翼”といっても、事業規模や路線、使用機材などはさまざまな違いがある。その中でも、主に30~70席程度の小型機(ターボプロップ機)で離島やその他の地方路線を運航する地域航空会社が抱える課題は多い。それらの路線は生活の足であり、住民の生命線ともいえるが、もともとの需要が限られるうえに、少子・高齢化等による利用者数の減少は本土の過疎地よりもさらに早いスピードで進む傾向にある。

 その需要に合わせたサイズの機材は提供座席数が少ないため、大型機に比べて輸送効率が悪く運賃も高めの設定とならざるを得ない。天候の影響を受けやすいため就航率は下がる。経営規模から保有できる機材数も限られるため、機体整備時にも欠航や減便といった事態も出てくる。大手航空会社からの出資や国・地方自治体からの補助金・助成金等の支援措置もあるものの、苦しい経営状況のなかでは安全基盤の確立にも影響を及ぼしかねないといった事情を各社は抱える。

 これらの課題に対して国土交通省は16年、「持続可能な地域航空のあり方に関する研究会」を立ち上げて議論を重ねた。地域航空路線が地方創生や観光立国に果たす役割は大きく、それを持続可能なものとするためには、従来の取り組みを超えた地域航空のあり方を模索する必要があるとの認識に基づく。そして18年3月には最終取りまとめとして、「抜本的な対策としては、地域航空を担う組織のあり方自体を見直すことが必要であり、一社化(合併)または持ち株会社の設立による経営統合の形態を模索していくべき」などと提言した。

地域航空のアライアンスが誕生

 これらの流れを踏まえて19年10月には、九州地域において従来の系列を超えた航空会社間の協業を促進しようと、地域航空会社3社と大手航空会社2社により、地域航空サービスアライアンス有限責任事業組合(EAS LLP)が設立された。国交省が提言した一社化や持ち株会社設立による経営統合といった方向性とは少し形態が異なるものの、より柔軟な組織体により、協業での課題克服に具体的な取り組みを開始した。有限責任事業組合(LLP)とは、企業同士のジョイントベンチャーや専門人材の共同事業を振興するために経済産業省が創設した制度で、規模が異なる企業同士でも対等な関係で事業を行えるのが特徴だ。

 EAS LLPのメンバーは、九州に拠点を置き離島路線等を展開する熊本(天草)がベースの天草エアライン(AMX)、長崎がベースのオリエンタルエアブリッジ(ORC)、鹿児島がベースの日本エアコミューター(JAC)、これに大手の日本航空(JAL)と全日空(ANA)が参画している。このうちJALとJAC・AMX、ANAとORCが系列関係にあり、LLP設立まではそれぞれの系列内でのコードシェアや機体整備での協業等にとどまっていた。

 これに対してEAS LLPでは、離島やそれに準じる地域の生活に重要な役割を果たす路線が維持できるよう、地域航空各社の独自性は保ちつつ、大手系列の枠を超えた協業の促進・拡大を図っていく。活動期間は設立から4年間とし、3年を経過した時点(22年10月)でそれまでの取り組み状況を検証し、それ以降の対応を協議する。

共同でプロモーションや運航も

 その取り組みの一環として、9月8日からメンバー5社による共同プロモーションを開始した。アフターコロナに向けて就航地域の魅力をSNSも活用して広くアピールし、離島生活路線等の販売を促進する。各社が統一的なテーマを掲げ、それぞれの就航地域の自然景観、生活文化、伝統的歴史等の観光資源やその魅力に加え、商品・サービス等を紹介する情報を発信していく。

【続きは週刊トラベルジャーナル21年11月22日号で】

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