Travel Journal Online

コロナ禍の環境トロフィー勝者

2021年11月22日 12:00 AM

 ドイツ旅行業協会の今年の総会はオンライン開催の昨年とは異なり、ギリシャのペロポネソスで10月末の4日間リアルで開催された。コロナ禍の現状、出口戦略、気候変動と社会的責任などが論議された会期中、環境保護とサステイナビリティーに貢献する旅行業界の活動を競うコンテスト「エコトロフィー」の表彰が行われた。1987年に同協会が設けた国際賞は旅行業界で最も伝統ある賞に数えられている。

 今年は「危機を機会に」をスローガンに、環境に優しく社会的責任を果たし経済的に実行可能性のある道を探る革新的なアイデアが求められた。イベロスター・ホテルズ&リゾーツ(スペイン)、フェアアウェイ・トラベル(ドイツ)、シュトゥディオスス(ドイツ)の3社が最終選考に残り、イベロスターがトップの座を射止めた。

 国際ホテルグループ・イベロスターは、「変化の波」と名付けた気候と環境保護のコンセプトと活動が受賞対象となった。海洋保護を含む幅広い具体的な活動プログラムで、社会的責任を果たすツーリズムモデルとして最高点を得た。同グループはコロナ禍でも手を緩めずに社会貢献活動を推し進めてきた。審査員は、この総合的ビジョンは勇気を与え創造を刺激するアフターコロナの見本となるものであり、業界の牽引役と自負して活動を実行してきたイベロスターを評価した。また、宿泊客の環境保護意識を高めることにも重点を置き、審査員の共感を誘った。

 グループのオーナーであるフルシャ家が気候保護と持続可能性を重大関心事と受け止め、プロジェクトを牽引してきたことを同社役員は授賞式で説明。「グループの目標は野心的で、コロナ禍でも世界中の当ホテルは使い捨てプラスチックを使用しなかった。25年までに廃棄物完全ゼロ、30年までにカーボンニュートラルを目指している。またホテル周辺の環境エコシステム保全にも関与している。再生可能エネルギーを使用し、多様な海洋保護と自然保護プログラムを実施し、たとえばカリブ海ではサンゴ礁研究所を置いた。海洋保護はビーチホテルが多い当社では特に重要である」と述べた。ホテル宿泊客はホテル滞在中に「変化の波」に接しその価値を知ることにより、環境保護に関する広い体験を得て感謝し評価していることは注目に値する。

 世界18カ国に4~5つ星ホテルを100余り有す同グループは、25年までに100%フェアなシーフード使用、廃棄物ゼロの循環経済、30年までにカーボンニュートラル、ホテル周辺環境エコシステムと健全なビーチといった具合に時間を設定してプログラムにコミットしている。

 ベルリンのフェアアウェイは現地の人々の生活と文化に配慮し、環境と気候に優しい長期の体験外国旅行に特化する小さな旅行会社。コロナ禍でダメージを受ける現地の人々の収入と絆を守るために行っているオンライン料理教室が今回の受賞対象となった。

 また、ミュンヘンに本社を置くスタディーツアーで有名なシュトゥディオススは、今年初めからすべての旅行にCO2オフセットを付け、気候保全と社会的責任のある旅行が評価された。資金はネパールのバイオマス設備建設に投資されている。

グループ4●旅行業界と外国政府観光局で永年キャリアを積んできた4人により構成。大学の観光学部で教鞭をとったり、旅行業団体の幹部経験者もいる。現在、外国メディアで日常的に海外の観光・旅行業界事情に接し、時宜に応じたテーマで執筆している。