2021年11月15日 12:00 AM
宇宙旅行時代の幕が開いた。ヴァージン・ギャラクティックが民間の宇宙旅行を成功させ、数日遅れでブルーオリジンも続いた。9月にはスペースXが民間人だけによる宇宙滞在旅行を実現し、世界では宇宙を舞台とした旅行ビジネスの夢が花開きつつある。国内でも宇宙開発ベンチャーの活動や宇宙港誘致の動きが活発化している。
米国時間の7月11日朝、ニューメキシコ州の宇宙港スペースポート・アメリカを、母船に抱えられて飛び立ったヴァージン・ギャラクティックのスペースプレーン(航空機型有人宇宙船)「VSS ユニティ」は、出発から50分後には宇宙との境界に到達し民間企業として有人宇宙飛行を成功させた。
到達高度は高度80km。宇宙空間にいたのは数分間程度の宇宙旅行だったが、民間人4人とパイロット2人の搭乗者6人による飛行に成功したことは商業飛行に向けた大きな一歩となった。この飛行に自ら搭乗したヴァージン・グループ創業者のリチャード・ブランソン氏は、「子供の頃からこの瞬間を夢見てきた。この体験を世界中の宇宙旅行希望者と共有するのが待ち切れない」とのコメントを発表した。
これに続いたのが米アマゾンの創業者ジェフ・ベゾス氏が設立した宇宙開発企業ブルーオリジンが開発した再使用式ロケット型宇宙船「ニューシェパード」による有人宇宙飛行だった。アポロ11号が人類初の月面着陸に成功したのと同じ7月20日、テキサス州のブルーオリジン出発基地から発射。ベゾス氏を含む民間人ばかり4人の搭乗者は、宇宙との境界線の定義の1つであるカーマンライン(高度100km)に到達し、約10分後に地上に無事帰還。有償旅客を乗せた初の宇宙旅行を完遂した。
9月になるとテスラ創業者イーロン・マスク氏が設立した宇宙開発企業で、20年に民間企業として初めて有人宇宙船打ち上げに成功したスペース・エクスプロレーション・テクノロジーズ(スペースX)が、宇宙船「クルードラゴン」を打ち上げた。宇宙船には民間人だけで構成する4人の旅客が搭乗。地上約580㎞の地球周回軌道上で3日間を過ごしたのちに帰還した。ヴァージン・ギャラクティックとブルーオリジンがサブオービタル(弾道飛行)だったの対し、スペースXはオービタル(周回飛行)による本格的な宇宙旅行で、史上初めて民間人だけのチームによる長時間にわたる宇宙滞在という意味でも画期的で、宇宙旅行時代の到来を予感させる出来事となった。
宇宙飛行を成功させた3社は、商業宇宙旅行へ向けた歩みを加速している。10月にはブルーオリジンが2度目の宇宙飛行に成功。人気映画「スタートレック」で宇宙船船長役を務めた俳優のウィリアム・シャトナーさんが搭乗したことでも話題を集めた。ヴァージン・ギャラクティックも10月には、初の商業飛行となる2度目の飛行を計画。結果的に米連邦航空局(FAA)の認可が下りなかったものの、「22年第4四半期に商用サービスを開始する予定」と発表している。
3社を追う企業も登場している。米航空宇宙局(NASA)の元幹部が設立したスタートアップ企業アクシオム・スペースがそれだ。同社はNASAが将来的に廃棄を予定している国際宇宙ステーション(ISS)に代わる宇宙ステーションを地球周回軌道上に建設することを目指している。当初はISSにドッキングする形で宇宙ステーション建設の足掛かりとし、30年までにISSと切り離し単独の宇宙ステーション「アクステーション」とする計画だ。成功すればNASAにスペースを賃貸するなどB2B利用を見込むが、アクステーションを宇宙ホテルとして利用するB2C事業も考えられ、宇宙旅行ビジネスへの利用も想定可能だ。
宇宙へ人を運んだり滞在させるためのインフラ開発が進む一方、宇宙旅行ビジネスもじわじわと浸透し始めている。1990年代に創業したスペース・アドベンチャーズは12月に予定される日本のZOZOTOWN創業者・前澤友作氏の宇宙旅行を手掛けることでも知られる。同社によれば2001年に最初の民間人旅客を宇宙に送り込んで以来、同社を利用して宇宙旅行をしたのは7人。現在は船外活動を体験できる宇宙旅行も取り扱っている。
【続きは週刊トラベルジャーナル21年11月15日号で】[1]
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