ツーリズムとDXの最新報告

2021.11.08 00:00

 トラベルジャーナル1月4・11日号で米国のツーリズムビジネスサイトとアマゾン傘下のアマゾンウェブサービス(AWS)が世界中の1000社ほどのツーリズム関連企業を対象に、コロナがツーリズム企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)に与えた影響を調査した結果について紹介した。両社が同様の調査を今年も行い、その結果を2021DXレポートとして発表したので簡単に紹介したい。

 調査の目的が大きく5つ挙げられている。第1に事業計画全体におけるDX改革の重要性、次に膨大な社内および顧客情報の活用方法、続いてデジタルに傾斜する消費者を満足させるために必要なシステムやテクノロジー、DX関連投資の対象分野、そしてDX担当部署・スタッフのリクルートと教育である。結果はDXが非常に重要と考える企業が調査対象の7割近くに及び、ある程度重要という企業と合わせると全体の9割に達する。

 コロナがDXに与えたインパクトについてはゼロと答えた企業が15%、小さな影響しかないという企業が39%と大した影響なしという企業が半分以上を占める。この結果はいささか意外だが、コロナ故にDXを推進する必要性をより強く感じた企業が多かったということだろう。データ収集と分析の重要性は全体の共通認識だが、45%が自社のその分野の能力が優れているとするのに対し、半数近く(44%)が能力は平均として満足するレベルではないというニュアンスで回答している。この点で課題に挙げられたのはセキュリティーとプライバシー保護、そして有能なスタッフの不足である。

 コロナによる需要減退を利用してDXを一層推進できたかとの質問には7割がイエスと答え、トラブルを前向きに捉えようという姿勢が見受けられる。DXに関わる重要な決定を行うレベルを聞いたところ、CEOレベルが33%、CFOやCIOのようないわゆるCXOレベルが32%となった。その下のレベルについてのヒアリングでは十分な能力を有するスタッフを確保できているとの回答が4割に対し、課題があるが6割となった。十分なトレーニングが社内でできているかについても肯定が33%、ある程度できているが37%となり改善の余地があると感じている組織が多い。

 昨年の調査ではなかった項目がエリア比較だ。具体的には欧州とアジア・パシフィックの2地域でDX戦略の重要分野、そしてクラウドに基づくシステムの有用性について比較している。重要とする分野では欧州がコスト削減(51%)、マーケテイングとPR(37%)、顧客満足度向上(36%)、システムのレベルアップ(33%)、経営の決定プロセスに有効なデータ分析と活用(27%)などとなっている。

 これがアジア・パシフィックになるとトップがデータ分析機能の強化(44%)、次いでマーケテイングとPR(34%)、顧客満足度向上(33%)、商品とサービスの向上(23%)などが挙げられる。AWSのメインビジネスであるクラウドの活用についてはアジア・パシフィックの経営者の39%が事業のクラウド移管を進めつつあるとしており、世界平均の29%より高い結果が示された。

 欧米で旅行解禁がアジアより早く進んでいることが影響しているのだろうが、全体的にウィズコロナの前向きな姿勢が目立つ調査結果となった。

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グループ4●旅行業界と外国政府観光局で永年キャリアを積んできた4人により構成。大学の観光学部で教鞭をとったり、旅行業団体の幹部経験者もいる。現在、外国メディアで日常的に海外の観光・旅行業界事情に接し、時宜に応じたテーマで執筆している。

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