旅行・宿泊業の休廃業が前年超え 帝国データ調べ、ハイペースで推移

2021.11.01 00:00

 帝国データバンク(TDB)の調査によると、観光関連産業での休廃業・解散が前年を上回るペースで進んでいる。1~9月に全国で休廃業・解散を行った企業は4万1761件で前年同期から3.7%減少となったが、食品スーパーなど小売業が2桁減となる一方、運輸やサービス業は増加した。特に旅行業の増加率が目立つほか、ホテル・旅館は過去10年で件数が最多となった。

 休廃業は、法的整理の倒産を除き、特段の手続きを取らずに活動が停止したケース。これに解散を加えると、7業種のうち前年同期を上回ったのは、運輸・通信業(5.8%増)、サービス業(3.4%増)、不動産業(1.7%増)の3業種だった。これを細分すると、旅行業者代理業が77.5%増の71件で、ブローカー、男子服卸に次いで多く、旅行業も54.2%増の37件となった。ホテル・旅館は37.5%増の143件で、08年のリーマンショック当時の183件に次ぐ水準で推移している。

 全体で休廃業・解散が減少しているのは、無利子・無担保融資など資金繰り対策やコロナ対応の各種補助金・支援金の効力と見る。ただ、25.0%減となった倒産に比べるとほぼ前年並み。旅行業経営者でつくるトラベル懇話会の調査では、旅行業とホテルの約94%が雇用調整助成金を利用し、これが途絶えた場合、「廃業を検討」「休眠」との回答が約9%を占めた。

 緊急事態宣言が全面解除され、飲食や小売店などでは、需要の反動増を見越し積極的な展開を行う企業が出てきたという。ただ、行動様式の変化により、コロナ前水準への回復に懐疑的な見方もある。TDBは観光関連の休廃業について、「傷口が浅いうちに事業を畳む、先行きへの諦めムード拡大の兆候もある」と分析している。

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