奈良県、観光連携の土台づくり強化 総合戦略の柱に モデル地域で推進

2021.09.13 00:00

 奈良県は25年度までに観光消費額拡大などを目指す観光総合戦略を策定し、観光関係者が連携する土台づくりに力を入れる。事業者や市町村、観光協会、DMO(観光地域づくり法人)などが主体的に関わる意識改革と体制づくりを促す。奈良は全国屈指の歴史・文化資源を誇る一方、日帰り客が約9割を占め、周遊や滞在型観光の底上げが課題となっている。解決に向けて各実施主体の連携が重要との考えで、その基盤整備を施策の柱に位置づけた。まずはモデル地域を選定し、顔の見える関係の構築に取り組む。

 「特にここ数年で重視すべきは観光振興の土台づくり。地域のプレーヤーが対話を積み重ねて理念と目的を共有し、総合力で課題解決に当たることが重要になる」。8月31日にオンラインで開催した観光戦略説明会で、ならの観光力向上課の松浦功治課長は多くの時間を割いて主体性と連携の重要性を訴えた。観光関係者を対象にした自治体の説明会で、基本姿勢を強く説くのは極めてまれだ。

 総合戦略では、観光消費額を19年比で293億円増の2100億円、延べ宿泊者数を77万人増の350万人に増やす意欲的な指標を掲げた。客室数は約2200室増の1万2000室を目指す。奈良県は全国的に見て入込客数は少なくないが、宿泊者は最下位レベルで、受け皿となる客室数も少ない。文化資源にプラスアルファの魅力としてイベントや体験メニューを充実させ、滞在や移動の環境を整え快適性を高める。事業者連携は実現に向けた重要な鍵となる。

 モデル地域を2~3カ所選ぶ。市町村区分に捉われず、説明会参加者から手が挙がることにも期待する。効果的な連携の検討や役割分担の明確化に向けた取り組みを推進する。

【あわせて読みたい】コロナ後のDMO、地域と合意形成必要

関連キーワード