2021年7月26日 12:00 AM
コロナ禍で大打撃を受けたTUIは4月中旬に予告していた旅行相談料の徴収を5月17日より開始した。同社の店舗で旅行相談を受け、旅行を予約した顧客は旅行相談料を支払うことになる。
相談料は2段階の料金からなる。基本料金は、顧客の要望に応じて商品を探し、他の商品と内容や価格を比較し、目的地の出入国規則に関する情報の提供、航空座席予約を行うサービスにかかる。旅行代金が500ユーロ(6万5165円)未満で15ユーロ(1955円)、500ユーロ以上では29ユーロ(3780円)が請求される。それ以上の追加サービス、たとえば追加手荷物、シャトルバス、ホテルルームの追加ベッド手配、ホテルのスポーツプログラム、小旅行などの相談や予約は特別料金となり、500ユーロ未満で25ユーロ(3258円)、500ユーロ以上では39ユーロ(5083円)請求される。TUIは旅行相談料の導入を国内の400店舗で実施し、フランチャイズパートナーや独立販売店などは導入について自由裁量としている。
ドイツ人は旅行会社をよく利用する。ある調査によれば19年に休暇旅行に出た人の40%は旅行会社を利用して旅行を計画し、専門家の知識や経験を評価している。まさに旅行会社の専門的コンサルティング業務が有料化された形だ。
大衆紙ビルトは「いままで無料で行われていた旅行会社での旅行相談が有料になる。旅行会社は旅行販売による手数料を得ている。旅行会社はコロナの損失を顧客からの相談料徴収で穴埋めするのか」と報じ、消費者団体も情報提供と相談は旅行会社の義務ではないかと否定的だ。また、7000の会員を擁する独立自営旅行会社連盟は、旅行会社の費用削減努力は理解できるが、販売店と消費者を犠牲にしてはならず、コロナ禍に間違ったシグナルを出していると反発している。
一方、大方の旅行会社は相談料の導入はリスクはあるが、いまこそ試すべき時であると賛同し、TUIの勇断に好意的だ。旅行の専門家はコロナ禍では消費者の不安は増大し、予約変更や取り消しなどに関して刻々と変化する出入国規則の情報を必要としており、旅行相談の価値は上がったとみている。他の産業部門と同じように旅行コンサルティングも報われるべきとしている。
日本ではJTBが19年に国内12店舗で旅行相談料の徴収を開始したが、消費者の理解を得られずに半年で終了に至ったという苦い経験がある。ドイツでも過去にこの問題は度々論議されたが、実施されたことはなかった。TUIに先駆け、昨年11月にDERは傘下の旅行販売店で相談料の徴収を始めている。ちょうど旅行相談件数が急増した時期であった。DERは消費者は相談料に理解を示し受け入れているとし、いまではパートナー販売店の半数も相談料金を請求している。大手のアルツアーとシャウインスラントは相談料導入の予定はないが、FTIグループはフランチャイズ販売店にサービス料の徴収を勧めている。
旅行業最大手のTUIが旅行相談料を徴収し始めた意味は大きく、今後定着するかどうか業界は注視している。オンラインで旅行を購入する場合、相談料は生じず、相談料導入がオンライン予約を促進することも旅行会社は期待しているようだ。
グループ4●旅行業界と外国政府観光局で永年キャリアを積んできた4人により構成。大学の観光学部で教鞭をとったり、旅行業団体の幹部経験者もいる。現在、外国メディアで日常的に海外の観光・旅行業界事情に接し、時宜に応じたテーマで執筆している。
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