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関係人口のつくり方 地域を支援する1800万人市場

2021年7月5日 12:00 AM

(C)iStock.com/IR_Stone

人口減少や少子高齢化が進む地域の活力を維持するために関係人口を増やす取り組みが活発化している。居住拠点を他に定めていながら、直接的・間接的に多様な形で地域に関わる関係人口は全国に約1800万人存在するとされる。国土交通省も懇談会での議論を重ねるなど、関係人口の拡大・深化への道筋を探っている。

 全6回に及んだ「ライフスタイルの多様化と関係人口に関する懇談会」を終えた後に挨拶した国交省の中原淳国土政策局長は「今後、関係人口はいろいろな政策の柱の1つになると思っている」と関係人口の重要性を強調した。

 実際に各省庁では関連する多くの取り組みが動いている。総務省は18年1月にまとめた「これからの移住・定住に関する研究会」報告書で関係人口の重要性を指摘。18年度予算では関係人口創出事業のために2億5000万円を割き、以降、19年度5億1000万円、20年度2億4000万円、21年度6000万円の予算を付けている。具体的には関係人口ポータルサイトを立ち上げ、全国の事例やモデル団体の取り組み紹介などを行っている。

 内閣府は地方創生推進の一環として関係人口創出・拡大のための対流促進事業として20年度1億円、21年度1億6000万円を予算化して、民間事業者等による都市住民と地域のマッチング支援などに関する提案型モデル事業を実施するなど具体的な取り組みを始めている。

 国交省も関係人口に早くから着目。国土形成計画を推進するため、16年には国土審議会計画推進部会に「住み続けられる国土専門委員会」を設置し、関係人口を都市・地域の共生の担い手として対流促進型国土の形成に寄与する存在と位置づけた。その後、19年に「ライフスタイルの多様化等に関する懇談会」を設置。これを引き継ぐ形で20年7月から「ライフスタイルの多様化と関係人口に関する懇談会」として議論を進め、その成果を今年3月に最終とりまとめとして発表した。

 国交省国土政策局総合計画課によると、懇談会での議論と最終とりまとめは短期的な施策に影響を及ぼすものではなく、むしろ長期的視野に立ち、国交省の施策を考える際の参考にするために識者の意見をまとめたものだという。

 そもそも関係人口とは、定住人口や交流人口に続く第3の人口とされている。定住人口は地域に居住する人口で、代々土地に暮らす人口も移住人口も含まれる。交流人口は幅広く地域に出入りする人口の意味合いだったが、次第に観光人口に近い使われ方に変化。交流人口は観光やスポーツ目的で訪れあまり地域と関わらない者を指す言葉となり、定住人口に対する言葉として交流人口が使われることが多くなった。このため交流人口からはみ出る流動人口を関係人口としてくくり直す必要が生じたという事情もある。

 関係人口は定住人口と交流人口のいずれにも当てはまらず、その中間的な位置付けだ。単に地域を訪れるだけでなく、その地域を好み、地域づくりへの参画意欲もある者たちが関係人口と呼ばれている。国交省の定義では「移住や観光でもなく、単なる帰省でもない、日常生活圏や通勤圏以外の特定の地域と継続的かつ多様な関わりを持つ」のが関係人口とされる。懇談会座長を務める明治大学農学部の小田切徳美教授は、「いろいろな方が参加しながらその中身を作っていく、ある種のオープンイノベーションの概念」としている。

 なお懇談会や後出のアンケート調査では、関係人口の中に、地域を訪問しないものの、ふるさと納税やクラウドファンディング、地場産品等購入、特定の地域の仕事の請負、情報発信、オンラインを通じた交流等を行う者も、関係人口(非訪問系)に分類している。

関係人口調査から見えたこと

 国交省は懇談会と並行して全国の関係人口に関する実態把握調査を行い3月に発表した。全国に居住する18歳以上を対象にインターネットアンケート方式で実施され、14万8831人から回答を得ている。関係人口に関する調査としては昨年、3大都市圏の関係人口についての調査結果が発表されたが、今回は全国を対象にかつてない規模で調査が行われた。

【続きは週刊トラベルジャーナル21年7月5日号で】[1]

Endnotes:
  1. 【続きは週刊トラベルジャーナル21年7月5日号で】: https://www.tjnet.co.jp/2021/07/04/contents-88/