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週休3日制の足音 そのとき観光はどう変わるか

2021年6月7日 12:00 AM

(C)iStock.com/DNY59

週休3日制導入に向けた議論が官民で活発化している。狙いは働き手のキャリアアップを促すための選択的週休3日制の実現や、新型コロナウイルス感染防止対策の一環などとさまざまで、単純な休日の増加とは異なる面がある。それでも大きな社会変容へと進む糸口になる可能性もある。週休3日制導入により観光はどう変わっていくのか。

 自民党の1億総活躍推進本部は、ウィズコロナ期、ポストコロナ期を見据えた1億総活躍社会の実現に向けて関係各界へのヒアリングを重ねてきたが、これを基に4月20日には「『選択的週休3日制』による社会発展の促進」をとりまとめ、政府に提言した。政府の経済財政諮問会議も4月13日に開催した会議で選択的週休3日制について取り上げ、導入の必要性を確認した。同会議の方向性は政府が夏にも発表する予定の「骨太の方針」に反映される見込みだ。選択的週休3日制導入が実現に一歩近づいたといえる。

 民間にも動きがある。経団連は昨年5月、コロナ対策のため週休3日制の導入を各企業に呼びかけた。これは経団連がまとめた「新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン」に盛り込まれた内容で、通勤頻度を減らし公共交通機関の混雑を緩和する方法の1つとして、テレワーク等と共に提案されたものだ。

 すでに経団連の呼びかけに応じて複数の大手企業が週休3日制を導入している。例えば東芝グループは在宅でのテレワークが困難な職場では週休3日制を取り入れている。通常のフルタイム勤務と同じ労働時間と給与を前提とする変形労働制を利用して週休3日を実現した。また、ワコールは全従業員を対象に4月1日~6月30日の予定で週1日の休業日を導入し、実質的な週休3日とすることを発表している。

 経団連がコロナ対策で週休3日制を打ち出したのに対して、経済財政諮問会議の提言に含まれる選択的週休3日制はリカレント教育によるキャリア形成に重きが置かれている印象だ。提言では、選択的週休3日制をヒューマン・ニューディール構想の一環に位置付け、「従業員の学び直しへの支援を強化するため、選択的週休3日制を導入するなど働きながら学べる環境を整備すべき」としている。

 会議参加者からは「無駄な労働時間を削って、それをキャリアアップのために使い、労働者が仕事内容を変える目標を抱いてもらいたい」や「時間ができたからといって本当に社員がモチベーションを持って、より高いスキルを学ぼうとするかという根本的問題がある」といった意見が出ていることからも分かるように、あくまで週休3日を余暇活動ではなくキャリア形成に生かすことが主眼となっている。

 自民党の1億総活躍推進本部の提言は多様な働き方を後押しすることが狙いだ。希望する就労者が週休3日制を選択できるようにし、1週間の休日を増やすことで、休日を子育て、介護、治療に充てて仕事と両立がしやすくしたり、大学院進学やリカレント教育によるキャリア形成、またはボランティア活動や地方兼業、副業による自己実現のための時間確保をしやすくすることを目指している。

 キャリア形成を目的の1つに掲げている点は経済財政諮問会議と同様だが、より幅広い狙いがありそうだ。提言の中でも「選択的週休3日制の普及により、ワーク・ライフ・バランスの機運が醸成され、週休2日未満の企業が1週間の休日数を増やすといった副次的効果も期待される」とワーク・ライフ・バランスの改善に言及している。

 厚生労働省「就労条件総合調査2020」によれば、完全週休2日制より実質的な休日数が少ない企業は46.7%で、完全週休2日制の44.9%を上回る。完全週休2日制より実質的に休日が多い(週休3日制を含む)企業は8.3%と全体の1割にも満たない。それでも就労形態に工夫を凝らす企業は増えている。サイボウズでは週休3日どころか週3日勤務といった勤務体系も選択できる。

【続きは週刊トラベルジャーナル21年6月7日号で】[1]

Endnotes:
  1. 【続きは週刊トラベルジャーナル21年6月7日号で】: https://www.tjnet.co.jp/2021/06/06/contents-84/