コロナ後の目標どうつくる 推進基本計画改定先送りで

2021.05.24 00:00

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3月に計画期間終了となった観光立国推進基本計画の改定が先送りされた。理由は言うまでもなくコロナ禍の影響。観光を取り巻く環境の先行きが見通しづらいからだ。では私たちは次期基本計画において、不透明さを増した未来における観光立国像をどう描き、どのような目標設定を行うべきなのだろうか。

 観光庁の蒲生篤実長官は3月19日の定例会見で、観光立国推進基本計画の改定を先送りする考えを明らかにした。当面は昨年12月にまとめられた「感染拡大防止と観光需要回復のための政策プラン」に取り組むという。

 観光立国推進基本計画に関しては、観光立国推進基本法がその第10条で「政府は観光立国の実現に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、観光立国推進基本計画を定めなくてはならない」と規定している。また第11条は「観光立国推進基本計画以外の国の計画は、観光立国の実現に関しては、観光立国推進基本計画を基本とするものとする」としている。その基本計画に空白期間が生じてしまうわけだ。

 観光立国推進基本計画はこれまで、07~11年度の基本計画が07年6月に閣議決定されて以来、12年3月閣議決定(計画期間12~16年度)、17年3月閣議決定(計画期間17~20年度)と改定を重ねてきたが、今回初めて計画期間内に次期計画への改定が行われなかったことになる。

 改定先送りという異例の事態となった原因はコロナ禍だ。基本計画最終年度となった20年度はコロナ禍の影響を直接被り、国内旅行、訪日旅行、海外旅行が一時的に完全停止して需要が蒸発。20年度末になってもコロナ禍収束の目途が立たず、先行きが不透明なままだ。そのため観光立国推進基本計画も改定の先送りを余儀なくされた格好だ。

 観光立国推進基本計画を調査審議する交通政策審議会観光分科会が、今回の改定について初めて取り上げたのは昨年5月中旬の会合。新型コロナウイルス感染症による1回目の緊急事態宣言に重なるタイミングだったため書面による議事となった分科会だった。この時点で委員からはすでに計画期間や目標等について「緊急対応期間(ウィズコロナ)とその後の期間(ポストコロナ)に分けた議論等、コロナ収束の状況も踏まえた柔軟な検討が必要」といった意見も出ていた。

 8月開催の分科会でも「今回はこれまでの基本計画とは異なる。これまでと異なる世の中でどう考えるべきかを議論したい」や「観光産業が打撃を受けるなか、可能な限り実態に即した次期計画策定をすべき。例えば2年後、3年後の中間時期で見直すことができるようにするなど考慮すべき」など、従来とは異なる発想が必要との指摘がなされた。

 続く分科会は10月に行われたが、参加した観光関係団体からは「今後の目標については長期的、中期的、短期的なものが必要。1年ごとに現実的な目標を立て、毎年フォローアップすべき」といった声が上がり、委員からも「場合により目標期間を10年に変更し、その中でも5年を見据えるなどの策定方法も考慮すべき」といった意見が出た。

 さらに委員からは「コロナの収束が見えないなかで計画を策定するのは難しい。どのように策定を進めていくか事務局が見解を示すべき」や「現時点で数値目標を定めるのは不可能。コロナの影響をどのように踏まえ、今後どのように計画を策定していくか事務局がスケジュール感を示すべき」といった要望があった。

 こうした声を受け3月開催の分科会では、事務局を務める観光庁から21年度においても次期計画改定に向けた議論を継続することが説明され、改定先送りの流れが決まった。

改定にはさらなる困難も

 先送りによって時間的な余裕は確保できたが、改定作業は困難が予想される。コロナ禍により観光産業が受けたダメージが、コロナ後にどのような形で残るのかが分からないことや、そもそもコロナ禍の収束時期も定かでないからだ。

【続きは週刊トラベルジャーナル21年5月24日号で】

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