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近距離の航空路線縮小、欧州で広がり フランスが2時間半圏内禁止へ

2021年5月3日 12:00 AM

 気候変動など環境問題への対応策として、近距離の航空路線を縮小する動きが広がりつつある。フランス政府は2時間半圏内の国内線を禁止する法案を審議中で、可決される見通し。近距離路線の縮小は、KLMオランダ航空(KL)が「Fly Responsibly(責任ある航行)」のスローガンの下で取り組み、鉄道の利用を自ら促し注目を集めたことは記憶に新しい。コロナ禍で航空業界の業績は低迷しているが、環境対策はいや応なしに迫られている。

 フランスが審議中なのは気候変動対策法案で、温室効果ガスの排出削減が目的。国内線縮小はその一部で、現地報道によると、対象範囲をめぐっては4時間以内とする環境有識者会議の意見もあったという。英国は政府が35年までに排出量を90年比で78%減らす新たな方針を打ち出し、国際航空路線も削減対象に含まれる見通し。

 温室効果ガスを大量に排出するとの負の評価から、航空会社への圧力はここ数年で急速に強まっている。特に契機となったのは19年、環境意識が高い若者を中心に広がった「フライトシェイム(飛ぶのは恥)」運動だ。世間の機運が高まるなか、KLは20年3月からアムステルダム/ブリュッセル線の減便を皮切りに、6~7路線程度ある500km以下の近距離路線の運航規模を順次見直す方針を打ち出した。ドイツでも、ルフトハンザ・ドイツ航空が鉄道との連携に取り組んでいる。

 ブッキング・ドットコムが3月に世界30カ国で実施した調査によると、責任ある旅行への需要が高まり、コロナ下で「サステイナブルな旅行を優先したい」との考えに至った人は83%を占めた。旅行関連事業者がコロナ収束後の事業計画を描く際、環境対策は重要な要素となりそうだ。

【あわせて読みたい】環境配慮で最先端走るKLMオランダ航空[1]  KLM 「近距離は鉄道利用を」[2] フライトシェイム 航空産業に吹く逆風[3]

Endnotes:
  1. 環境配慮で最先端走るKLMオランダ航空: https://www.tjnet.co.jp/2020/01/27/%e7%92%b0%e5%a2%83%e9%85%8d%e6%85%ae%e3%81%a7%e6%9c%80%e5%85%88%e7%ab%af%e8%b5%b0%e3%82%8bklm%e3%82%aa%e3%83%a9%e3%83%b3%e3%83%80%e8%88%aa%e7%a9%ba/
  2. KLM 「近距離は鉄道利用を」: https://www.tjnet.co.jp/2019/10/28/%e3%80%8c%e8%bf%91%e8%b7%9d%e9%9b%a2%e3%81%af%e9%89%84%e9%81%93%e5%88%a9%e7%94%a8%e3%82%92%e3%80%8d%e3%80%80%e7%92%b0%e5%a2%83%e9%85%8d%e6%85%ae%e3%81%b8klm%e3%81%8c%e5%85%88%e9%80%b2%e7%9a%84/
  3. フライトシェイム 航空産業に吹く逆風: https://www.tjnet.co.jp/2020/02/03/%e3%83%95%e3%83%a9%e3%82%a4%e3%83%88%e3%82%b7%e3%82%a7%e3%82%a4%e3%83%a0%e3%80%80%e8%88%aa%e7%a9%ba%e7%94%a3%e6%a5%ad%e3%81%ab%e5%90%b9%e3%81%8f%e9%80%86%e9%a2%a8/