観光庁予算の総点検 産業再生へ総額408億円の使途

2021.02.15 00:00

(C)iStock.com/KubraCavus

観光産業がかつてない危機に直面するなか、観光庁の21年度予算が固まった。コロナ禍で甚大な打撃を受けている観光産業の再生へ向けた重要な転換点となるこの時、予算は何にどう投じられるのか。内容を読み解く。

 コロナ禍の下で税収や財源が不安視されるなか、21年度の観光庁予算は減ってしまったのか。答えはイエスでありノーでもある。

 減ったのは当初予算である。大きな財源である国際観光旅客税の充当分が半減する見込みだからだ。20年度予算では約510億円分の財源を生み出したが、出入国規制で日本人の海外旅行と訪日外国人が激減しているため、出国者を3000万人程度と仮定して税収相当額を弾いた。結果、21年度は半分以下に落ち込むこととなり、一般会計を財源とする予算と合わせた合計額は408億7400万円。20年度の680億9400万円と比べると4割減となる。

 一方で増えたといえるのは、前年度の補正予算を含めたいわゆる15カ月予算として捉えた場合だ。20年度第3次補正予算はコロナ対策等もあって650億円規模に達した(GoToトラベル事業分を除く)。これを21年度当初予算と合わせると約1058億円となり、20年度当初予算比で55%増、前年の15カ月予算と比較しても44%増。観光庁は、当初予算が伸び悩むなか、補正予算で手厚い措置が講じられたことについて、「充実した規模を確保できた」としている。

 補正予算はいうまでもなく21年3月末までに執行されるのが基本だが、巨額の予算に組み込まれた事業の中には実施が21年度にずれ込むと予想される項目も多く、観光庁もその可能性を認める。実質的には21年度に使われる予算という側面も否定できないわけだ。当初予算には補正予算で打ち出された重要施策に付随する事業が複数あるため、まずは補正予算の内容から見てみる。

補正の目玉は観光地再生

 巨額の補正予算が認められた背景には、昨年12月の観光戦略実行推進会議で決定した感染拡大防止と観光需要回復のための政策プランの存在がある。これに基づき、感染防止策の徹底を大前提として、GoToトラベル事業などで国内旅行需要を強力に喚起しつつ、本格的な訪日旅行の回復に備えた取り組みを進めるのが補正予算の趣旨だ。

 目玉は国の支援によるホテル、旅館、観光街等の再生プランだ。補正の8割以上に当たる549億7200万円を割く「既存観光拠点の再生・高付加価値化推進事業」として予算化された。事業内容は大きく5つ。1つ目は宿泊施設や飲食店、土産物店等の施設改修の支援だ。地域の観光関連施設全体の質向上を図り、旅行者の滞在環境を上質化するため、改修費用の2分の1を国が負担する仕組みを創設する。同時に、宿泊施設の経営革新のために専門家の派遣を含む支援制度を拡充する。また、日本政策金融公庫などによる観光産業生産性向上資金の貸し付け対象の拡充も図る。現在の対象は免税店のみだが、宿泊・飲食・土産物店にも広げ、融資限度額も引き上げて設備投資を助ける。

 宿泊施設の廃業に伴い、地域の景観が損なわれる事象が全国各地で起きている。その問題解決に向け、廃屋の撤去による景観改善にかかる費用を補助する支援制度も設ける。撤去の対象は民間施設と公共施設のどちらも含まれるが、観光地としての景観改善とセットで認めるものとし、現在、制度設計を進めている。

 3つ目の事業として、宿泊事業者の連携と協業を促す取り組みも予算化された。たとえば町全体を宿泊施設に見立て、飲食施設を複数の宿で共用するなど、分散型ホテルの取り組みを促すほか、他の事業者と連携した新ビジネスの創出も支援する。4つ目は公共施設に民間の知恵など活力の導入を促し、魅力と収益力の向上を図るため、施設改修の費用を補助する。カフェの併設などが一例だ。5つ目として、感染拡大防止策も支援する。

【続きは週刊トラベルジャーナル21年2月15日号で】

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