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コロナ禍でオートキャンプ好調

2021年1月25日 12:00 AM

 長引くパンデミックでも成長した数少ない観光部門の1つにキャンピングツーリズムがある。ドイツのオートキャンプはここ数年上昇を示していたが、この傾向はさらに強まっている。

 コロナ感染拡大で開催中止を余儀なくされたドイツの見本市だが、9月にデュッセルドルフで行われた大規模メッセのキャラバン・サロン(国際レジャー用車両・洋品展)は十分な入場者数と過去最高の直販額などを記録し成功裏に閉幕。観光大不況の中、将来性ある旅行形態としてメディアの関心を集めた。

 キャンピングカーへの関心は特にミレニアル層で強く、大幅に売り上げを伸ばしている。ドイツキャラバン産業工業会によればキャンピングカーとトレーラーの20年度新規登録は11月にすでに10万台を超えて年間新記録を達成し、キャンピングカーは4割も伸びた。

 同工業会、マーケットリサーチのGfKやドイツ経済科学研究所、ドイツキャンプ場協会等はコロナ禍でも成長するキャンピングツーリズムの持つ潜在性と経済効果を発表している。ドイツのキャンプ場とカーパーク(数泊の車内宿泊許可駐車場)の上部組織であるドイツキャンプ協会BVCDによれば、20年のキャンピングツーリズムは過去最高の19年とほぼ同水準で推移した。20年1~9月のキャンプ場宿泊統計では3121万泊を数え、春のロックダウンにもかかわらず歴史的記録年となった。

 11月のロックダウンで再び宿泊できなくなったため20年度の宿泊数は微減となるようだが、大打撃を受けた他の宿泊施設とは雲泥の差だ。オートキャンプは魅力的で安全、将来性のあるサステイナブルな旅行形態であることが観光市場で認識されたと論じている。

 現在、ドイツで登録されているキャンピング車両は130万台弱(キャンピングカー59万台、キャンピングトレーラー70万台)で、新規登録は年々増加。定住トレーラーと改造した乗用車を含めれば163万台にのぼる。

 観光経済研究所の算定ではキャンピングツーリズムの19年経済効果は旅行先における消費、往復旅費、用品や車両を含め148億ユーロ(約1兆8000億円)で、16年と比較して約18%増加した。オートキャンプ愛好家は国内旅行が多く、国内の観光を潤し雇用を創出する。ドイツのキャンプ場における19年宿泊数は、連邦統計局の発表では3576万泊となっている。経済研究所はカーパークや定住トレーラーなどの宿泊数も加えて1億泊以上とみている。

 またハイデルベルクのエネルギー・環境研究所は、さまざまな旅行形態の排出ガスを調査し、オートキャンプは飛行機+ホテルや車+ホテルの旅行形態より環境に優しく、鉄道旅行にも劣らないと評価した。車自体は往復移動に排出ガスを出すが、キャンプ場宿泊はホテルが出す排出ガスよりはるかに少なく、ホテル1泊はオートキャンプ1泊の10倍の排出ガスを放出する。オートキャンプはサステイナブルな旅行を求める消費者に応える旅行形態と評価している。

 ソロキャンプが20年流行語大賞トップ10に入り、日本でもキャンピングの関心が高まっている。今後の日本国内と海外でのオートキャンプの展開に注目したい。

グループ4●旅行業界と外国政府観光局で永年キャリアを積んできた4人により構成。大学の観光学部で教鞭をとったり、旅行業団体の幹部経験者もいる。現在、外国メディアで日常的に海外の観光・旅行業界事情に接し、時宜に応じたテーマで執筆している。