Travel Journal Online

キーワードで占う2021年 GoTo後の喚起策から地域振興DXまで

2021年1月18日 12:00 AM

(C)iStock.com/Manuta

新型コロナウイルスの感染拡大で未曽有の打撃を受けた観光業界。21年も当面、コロナとの共生が続きそうだが、新たなムーブメントが生まれる兆しも見える。再生への糸口をつかむ18のキーワードから識者・記者がツーリズムビジネスを展望する。

<Keyword>GoTo後の需要喚起策 内需深掘りで高付加価値旅を

 20年後半に全国各地を取材するなかで感じたのは、前年度を上回る稼働率や売り上げを獲得したホテルや施設が少なからず存在し、GoToが一定の効果をもたらした事実である。しかし、この好況は金銭的補助に支えられたものであって、キャンペーンが終了すれば効果も見込めなくなる。巨額の予算で苦境を支えてもらう観光業界が急ぎ取り組むべきは、産業的な変容である。他産業に比べて資本収益率が低い観光産業はこの機にこれまでにない高付加価値産業の道を探る必要がある。

 海外旅行、訪日旅行、国内旅行を逆三角形に配置したこの図は観光市場を構造的に把握するための3角思考図である。上下で見るとその舞台が「世界か日本か」で2分できるが、海外旅行と訪日旅行市場の復活には5年ほどの時間が予想されるので、当面は国内旅行市場における需要喚起策が重要になる。ここで着目すべきは、激減した訪日観光市場と入れ替わるように流入する「行き先を失った」日本人海外旅行市場のマネーである。実際のところ、GoTo好景気ホテルではこの層の新規顧客が増えた傾向が見受けられる。

 コロナ以前の問題としてコモディティー化が日本の観光市場の課題であったが、旅慣れた海外旅行客層を満足させる国内旅行を高付加価値化で実現できれば、回数化や周遊化で市場活性化の期待が高まる。ここにワーケーションや多拠点生活などのニューノーマルが加われば、これまでの余暇市場はライフスタイルの多様化に伴う広義の観光市場に拡張し、そこに新たなビジネスも生まれてくるだろう。業界キーワードは「内需の深掘り」である。

江藤誠晃●トラベルプロデューサー、BUZZPORT代表取締役。マーケターとして国内外各地の観光事業に携わると同時に旅行作家として世界各国の観光地を取材。一般社団法人NEXT TOURISM理事。ひょうご観光本部ツーリズムプロデューサーも務める。

<Keyword>日本発着クルーズの再開 春の実現へ海外無寄港も視野

 邦船の国内クルーズは3社3船が昨年11月から再開し、収容能力を最大50~70%に抑えた3泊までのクルーズを運航している。一方、外国船社各社は国土交通省海事局・港湾局、厚生労働省検疫部門と定期的な会議を持ち、再開の道筋を探っている。邦船再開で最も時間がかかったのは、発着地や寄港地の港湾とその衛生部局との調整で、地元医療とのバランスが大きな焦点となった。外国船社もいままさにその調整がスタートしたところである。

 再開のターゲットは3~4月。各社が通常、日本に配船する時期に当たる。国内の感染状況に大きく左右されるだろうが、外国船社の感染対策は国内よりかなり厳しく、諸外国の保険部門からの要請で講じている。いわば世界で最も安全な旅行形態だが、この点を各港湾の地元に捉えてもらえるかが鍵だ。

 再開時の乗客は日本人と日本在住者のみとし、また日本や近隣国の防疫措置次第だが、テクニカルコールと呼ばれる乗下船を伴わない海外港への寄港という国内クルーズに似た措置を取ることで、検疫のハードルを下げることも視野に入れている。その後は徐々に乗客の国籍が広がり、コースも従来のようなコースの設定が進むだろう。

 ここ約10年の間、外国船社が日本発着クルーズを定期的に行うことで、日本のクルーズ市場は大きく拡大してきた。アフターコロナでもこの傾向は続くと考えられる。しかし、これまでのように広告で大きな集客を得るのではなく、まずはクルーズの安全性を説きながら地道に啓蒙を行うことで、より強固なクルーズ市場の醸成を進めていくことになるだろう。

糸川雄介●シルバーシー・クルーズ日本・韓国支社長。1970年生まれ。日本クルーズ客船、スタークルーズを経て、ミキ・ツーリストで約11年間ロイヤル・カリビアン・クルーズの日本総代理店業務に従事。コスタクルーズ日本支社長を経て、18年6月のシルバーシー・クルーズ日本支社設立とともに現職就任。

【続きは週刊トラベルジャーナル21年1月18日号で】[1]

Endnotes:
  1. 【続きは週刊トラベルジャーナル21年1月18日号で】: https://www.tjnet.co.jp/2021/01/17/contents-65/